【教養】これからの時代に求められる「資質」とは?宗教を知れば世界が見えてくる

テクノロジーの急速な発展によって、人間社会はどんどん変化を遂げています。

これからの日本——いや世界に求められる「資質」って何だと思いますか?

今後数年の間に人工知能はさらに発達し、人間の仕事は確実に機械に奪われていきます。

この流れはすでに身の回りで起き始めていて、決して「SF小説のような話」ではなくなっているんですよね。

配達ドローンに自動運転技術、AIによるホログラム再現、レジのない店などなど——。

人間にかわって機械が仕事をする時代の到来は、そう遠い未来ではありません。

そうなったときに重要視される資質は、間違いなく「人間性」——つまり、「教養」です。人間らしさのある総合的判断、とでも言いましょうか。

ロボットやAIが得意とするようなガチガチの論理性は機械に任せておけばいい。人間は、人間の得意とする仕事をすればいいのです。

人間の得意とする仕事って何だろう?

いち早く物事の本質を見抜き、一見関係性のないもの同士を組み合わせたり、つなぎあわせたりして、情報を精査・整理しながら、人間味があり、かつ論理的で総合的な結論を下す。

人間の得意とするのは、こうした想像シミュレーションによる発想の転換——アイデアを生み出す力なのではないでしょうか?

そのためには、元となる知識や考えがなくてはいけませんし、自分の頭を使って考える力も必要不可欠です。

教育学者の斎藤孝氏は『読書力』で以下のように述べています1

読書の幅が狭いと、一つのものを絶対視するようになる。教養があるということは、幅広い読書をし、総合的な判断を下すことができるということだ。

目の前の一つの神秘にすべて心を奪われ、冷静な判断ができなくなる者は、知性や教養があるとは言えない。

知識なくして総合的な判断ができるとは言えませんし、知識だけ持っていても使い方を知らなければ意味はありません。

科学は「心」を進歩させたか?

過去に日テレ系列局で放送されていた番組『知ってるつもり?!』のフロイトの回では、こんな言葉がありました。

——人間はどこへ行こうとしているのか?

ある意味で、人間は神様になろうとしているのかも知れない。

望遠鏡によって神の目を、電話によって神の耳を、船や飛行機によって神の足を得たかに見える人間。

がしかし、人間は今、神に似つつあるということを必ずしも幸福だとは思えなくなっている。

つまり、「人間って科学技術の発展で神に似てきたのかもしれないけど、一番大事な"心"はぜんぜん進歩してないんだよなあ」ってことです。

たしかに科学は偉大ですが、決して万能ではありません。テクノロジーの発展は、生活を豊かにする一方で、さらなる戦争や貧困を起こしてしまっていることも事実です。

世界情勢は神経症にかかっているのかもしれない

僕の人生で好きな小説ベスト10に入るであろう、ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』からある言葉を引用2します。

知能は人間に与えられた最高の資質のひとつですよ。しかし知識を求める心が、愛情を求める心を排除してしまうことがあまりにも多いんです。(中略)

——愛情を与えたり受け入れたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし、神経症ないしは精神病すらひきおこすものである。

つまりですねえ、自己中心的な目的でそれ自体に吸収されて、それ自体に関与するだけの心、人間関係の排除へと向かう心というものは、暴力と苦痛にしかつながらないということ。

これって「ひとつの真理」だと思うんですよね。テレビをつければやれテロだの、やれ戦争だのというニュースがあまりに多いじゃないですか。

公安調査庁のホームページから「世界のテロ等発生状況」を確認することができるんですが、これを見ても分かる通り、ほぼ毎日、世界のどこかでテロが起きてます。

「愛情を与えたり受け入れたりする能力がなければ、知能というものは精神的道徳的な崩壊をもたらし、神経症ないしは精神病すらひきおこすもの」

——という『アルジャーノンに花束を』の一文が、世界全体にまで広がっているような印象を受けますね。

オリンピックに向けて「宗教」について学んでみてもいいかもしれない

まあだからといって僕は、「世界から戦争をなくそう!」だとか、「世界に平和を!」だなんて偉そうなこと言えません。

でも、一人ひとりが世界に目を向けて、それぞれの国の人たちの文化や信仰する宗教について理解を示すことはできるんじゃないかと思うんですよね。

2020年には東京オリンピックもありますし、もちろんさまざまな宗教信仰を持った人たちも日本にやってきます。

世界史を振り返ってみても必ず歴史の転換期には宗教が絡んできますし、今世界でも問題になっている中東も、背景には宗教が深く根付いていたりします。

テクノロジーが急速に発展していく中で、武器や兵器の脅威は日に日に増していき、目まぐるしく社会に変化が訪れる——。

決して平和とは言えない今の世界だからこそ、「教養としての宗教」を学んでみると、世界情勢に対してまた違った見方ができるのではないでしょうか?

まとめ

  • テクノロジーが発展した社会に求められる資質とは、人間性——つまり、教養である。
  • 教養とは、文化や宗教などの観点から総合的な判断を下すことができることなのかもしれない。
  • 宗教を学ぶことで、世界の動きが分かる

僕は池上彰氏の『池上彰の世界の見方 中東: 混迷の本当の理由』という本で中東問題——主に石油問題やイスラム教などの勉強をしました。

「ざっと知れればいいや」という人は、まず「中田敦彦のYouTube大学」の中東の動画をチェックしてみて、面白いと思ったら池上さんの本を読んでみるといいと思います。



  1. 『読書力』(齋藤孝, 岩波新書, p.51)
  2. 『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス, 早川書房, p.364)