動画は情報収集に不向きなのか?Z世代の「タイパ」とSNSのバイアス

近年、「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉をよく耳にしますよね。特にZ世代と呼ばれる若い世代は、このタイパを非常に重視する傾向にあると言われています。

しかし、タイパを重視するZ世代が、情報収集の手段としてYouTubeなどの動画サイトを好んで利用しているという話を聞くと、少し矛盾を感じませんか?

動画は文字や図表に比べて、情報収集の効率が悪いように思えます。この記事では、Z世代の情報収集の実態に迫り、動画が本当にタイパが悪いのか、そしてSNS、特にX(旧Twitter)における情報の偏りについて考察します。

Z世代とタイパ|本当に動画で情報収集してる?

Z世代は、デジタルネイティブ(生まれた時からインターネットやデジタル機器に囲まれて育った世代)として、情報収集においても効率性を求める傾向が強いと言われています。

限られた時間の中で、いかに多くの情報を得られるかが重要視されるのです。そんな彼らが、情報収集の手段として動画を多用しているという話は、一見すると矛盾しているように感じます。

しかし、本当にZ世代は動画だけで情報収集をしているのでしょうか?

2023年に総務省が発表した「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、10代、20代のインターネット利用時間のうち、動画投稿・共有サービスの占める割合は、それぞれ38.5%、34.9%となっており、他の年代と比較して最も高いことが報告されています。

また同調査では、行為者率(各メディアを利用した人の割合)についても、YouTubeなどの動画共有サービスが他のメディアを大きく引き離す結果となっています。このことから、少なくとも、調査対象となったZ世代の人々の多くは、情報収集の多くの部分を動画サイトに依存していることがうかがえます。

また、調査対象となったZ世代の中でも、特にスマートフォンの利用時間が長い人々は、動画サイトのみで情報収集を完結させている可能性が高いと考えられます。

動画の利点と欠点|情報収集の効率を考える

動画は、文字情報に比べて情報量が多く、視覚的に理解しやすいというメリットがあります。たとえば、料理のレシピやDIYの手順などは、動画で見た方が圧倒的に分かりやすいでしょう。また、エンターテインメント性が高いため、楽しみながら情報を得られるという点も魅力です。

一方、動画には情報収集の効率が悪いというデメリットもあります。たとえば、知りたい情報が動画のどの部分にあるのかを探すのに時間がかかったり、自分のペースで情報を読み進めることができなかったりします。

また、動画の再生には通信量も多く消費するため、外出先などでは視聴しづらいという問題もあります。ただし、近年はWi-Fi環境が整備された場所も増えており、データ通信量を気にせずに動画を視聴できる環境も広がりつつあります。とはいえ、外出先でWi-Fiのない環境にいる場合、依然として通信量の問題はネックになりうるでしょう。

動画視聴の「ながら見」文化

ここで、動画の視聴スタイルについても考えてみましょう。近年、多くの人が動画を「ながら見」しています。つまり、他の作業をしながら、BGMのように動画を流しているのです。この場合、動画の内容をじっくりと理解するというよりも、なんとなく情報を耳に入れているという感覚に近いでしょう。

このような視聴スタイルであれば、動画の情報収集効率が多少悪くても、それほど気にならないのかもしれません。むしろ、他の作業をしながら情報も得られるため、タイパが良いと感じる人もいるでしょう。残念ながら、それは十中八九、勘違いなのですが。

SNSのバイアス|X(旧Twitter)は特殊?

ここで、SNSにおける情報収集の偏りについても触れておきましょう。特にX(旧Twitter)は、文字情報を中心としたSNSです。そのため、X(旧Twitter)を頻繁に利用する人は、文字情報に慣れ親しんでいる傾向があります。

ある意見では、「文字情報が抵抗感なく、すらすらと頭に入ってくるような人々が、X(旧Twitter)には多く集まっている」と指摘されています。

つまり、X(旧Twitter)ユーザーは、文字情報に強い耐性を持つ、ある意味で特殊な集団であり、彼らの感覚が一般的な情報収集のスタイルとは異なる可能性があるということです。

自身の経験から考える|情報収集のバランス

僕も日々ネットを通じて情報収集をしていますが、テキストと動画のどちらも活用しています。割合としては、テキストが8割。動画は補完的な立ち位置にあります。

たとえば、新しいガジェット(電子機器やソフトウェア)の情報は、動画レビューを参考にすることが多いですね。実際に動いている様子を見ることで、使用感をイメージしやすいのは大きなメリット。

一方、専門的な知識を得たい時は、書籍や論文などのテキスト情報を重視します。テキスト情報は、自分のペースでじっくりと読み込むことができ、理解を深めやすいからです。最近では、長ったらしいYouTube動画はAIに要約させちゃってます。

このように、情報収集の手段は、目的や状況に応じて使い分けることが大切だと感じています。

自分に合った情報収集を

動画は、視覚的に理解しやすく、エンターテインメント性も高いため、情報収集の手段として有効です。しかし、情報収集の効率という点では、テキスト情報に劣る場合もあります。特にX(旧Twitter)ユーザーは、文字情報に慣れているため、動画の情報収集効率の悪さを強く感じるかもしれません。

大切なのは、動画とテキスト、それぞれのメリットとデメリットを理解し、自分の目的や好みに合わせて使い分けること。また、情報収集においては、効率だけでなく「質」も重要です。時には時間をかけてじっくりと情報収集をすることも、人生を豊かにする上で、必要なことではないでしょうか。