人が眠りについている間、時折見られる「夢」という現象──。
夢については未だに謎が多く、まだまだ未知の分野であると言えます。
実は、夢は誰しも見ているものです。見ていないと思っていても、それは起きたときに夢の内容を忘れてしまっているだけ。
つまり、夢を見るという行為は「見た夢をどれだけ覚えていられるか?」という点が重要になってくるのです。
たまに「夢の中で『これは夢だな』と自覚できる夢」がありますが、これこそが「明晰夢(めいせきむ)」と呼ばれるものです。
今回は、明晰夢歴10年以上の僕が、明晰夢を見る方法と明晰夢の危険性について詳しくまとめていきます。
明晰夢(めいせきむ)とは?
明晰夢(英語:Lucid dreaming)とは、夢の中で「これは夢だ」と認識し、その夢を自由にコントロールできるようになる夢のことです。
訓練次第では、空を飛んだり、手から光線を出したり、空想の中のキャラクターにも会ったりすることもできます。
五感の感じ方は現実世界とほとんど同じで、聞こえる声や音、見える景色、味や匂い、物を触ったときの感触までもがリアルに再現されています。
そもそも「夢」とは?
睡眠中は、思考や意識、長期記憶などに関わる「前頭葉」が海馬などと連携し、起きていたときにインプットされた情報を整理します。
情報整理の前段階になると前頭葉が半覚醒状態に入り、その際に起きる現象が「夢」であると考えられています。
明晰夢を見るための訓練方法
冒頭で話した通り、夢は誰しも見ているものなので、明晰夢を見れる可能性は誰にでもあります。
個人差こそあるものの、手順に沿って訓練していけば、きっと3ヶ月後には自由に夢をコントロールできるようになっているはず。
明晰夢を見るためには、以下のポイントに気を付けるといいでしょう。
- 夢を見やすい環境を研究する
- 見たい夢の内容を細かくイメージする
- 眠りに入るときの感覚を学ぶ
- 夢に入ってから夢と気付く訓練を行う
①夢を見やすい環境を研究する
明晰夢を見るためには、まず「どのような状況であれば、自分は夢を見やすいのか?」を把握しておくことが重要です。
体調がいいときなのか、悪いときなのか、それとも、精神的に安定しているときなのか、不安定なときなのか──。
他にも、室温や湿度、服装、運動量、食事量、ストレス度、寝る前の習慣、風呂のタイミングなどの条件によっても「夢の見やすさ」は変わってきます。
さらに「自分が夢を覚えているときは、どういった環境であることが多いのか?」ということを把握しておくと、自分にとっての「明晰夢にベストな条件」を知ることができるでしょう。
夢を見やすい環境の例
一般的には、二度寝や昼寝の際、精神的に疲れている、あるいはまったく運動をしなかった日などに夢を見ることが多いようです。
理想はどんな環境下においても明晰夢を見られるようになることですが、まずは「夢を覚えている、あるいは思い出す感覚」を身に付けましょう。
②見たい夢の内容を細かくイメージする
明晰夢を見るための最大のポイントは「イメージ力」です。寝る前に「どんな明晰夢を見たいのか?」「夢の中で何をしたいのか?」を頭の中で細かく思い描きましょう。
想像するシチュエーションにもパターンを設け、自分がどんなイメージを描いている際に夢に入りやすいかを研究しましょう。
眠りに入る前に見たい夢をできるだけリアルに想像し、時間と日数をかけて潜在意識にゆっくりと刷り込んでいくといいかもしれません。
一朝一夕では身につかないので、とにかく毎日イメージを繰り返すことが大切です。
見たい夢でなくとも、ぼおっと頭に浮かんできた景色の中に自分がいるイメージをするだけでも問題ありません。
頭の中で「おおまかなストーリー」を組み立てながら眠りにつくのもいいですね。
明晰夢を見る方法では、特にこの「イメージ力」が重要なポイントになります。イメージ力がまだ十分でない方や、上手くイメージができないと、この段階で行き詰まります。
僕がよくイメージするのは、以下のようなものです。いずれも長年の研究で導き出したおすすめの情景なので、ぜひ参考にしてみてください。
- 延々と下に続く階段を一歩一歩しっかりと降りていくイメージ
- 大草原に寝っ転がり、心地よい風を額の真ん中で感じるイメージ
- 蛇口から水がぽたっと垂れ落ち、水面に波紋がふわっと広がるイメージ
③眠りに入るときの感覚を学ぶ
明晰夢の訓練最終段階では、眠りに入るタイミングが分かるようになることが理想です。
起きている状態と寝ている状態の「狭間」では、頭で浮かべたイメージを映像化しやすくなります。
入眠時の合図を敏感に感じ取ることができれば、明晰夢に移行することも圧倒的に楽になるんですね。
変な音や声、景色、イメージ、そういった「現実世界とは少し違うようなもの」を感じたら眠りが近い証拠です。
眠りに入るタイミングでは、しばしば金縛りが起きることがありますが、決して焦らないようにしましょう。
「金縛り」は、寝る直前に見た景色がそのまま夢となって復元され、「脳は起きているが、体は寝ている状態」になって起きる現象です。
つまり、金縛りはすでに夢である可能性が高いのです。逆に言えば、金縛りは「明晰夢チャンス」です。「金縛りから明晰夢に移行する方法 」は後述します。
④夢に入ってから夢と気付く訓練を行う
明晰夢でもっとも難しいポイントは、夢を夢だと気付くことです。少しでも違和感を感じたら、すぐに「夢テスト」を行いましょう。
「何か変だ」と感じたタイミングに「夢テスト」をすぐさま実行するルーティンを持つことで、明晰夢に入りやすい状態を作り出します。
夢かどうかのテスト方法は、無意識下でも実行が可能なように現実世界でも「クセ」にしておくことが大切です。
夢判別の方法はさまざまありますが、もっとも手軽なものとしては「手の平を見る」という方法があります。
自分の手の指紋や小さい傷、そういったところを普段の生活の中においても細かく観察しておきます。
夢では多くの場合、指紋が単純なパターンであったり、変な模様であることが多いです。そのため、手のひらを見るという行為は夢判別にぴったりなんですね。
【夢判別】ドラマ『瞳の奥に』の場合
Netflixオリジナルドラマ『BEHIND HER EYES(邦題:瞳の奥に)』では、夢かどうかの判断において、以下のような解説がありました。
1時間ごとに自分をつねってこう言う。「私は起きてる」。
瞳の奥に(洋題:BEHIND HER EYES)シーズン1第3話
自分の手を見て、指を数える。置き時計を見る。腕時計でも良い。
遠くを見て、後ろを見る。慌てないで、集中する。
ドアを思い浮かべる。
正直、上記のテストだけでいいと言えるぐらい再現性が高い方法です。ただし、本当にこの通りに行わないと効果は低いです。
特に重要なのは、最初の1行ですね。現実でも1時間ごとにテストを行うことで、夢の中でも無意識に夢判別ができるようになります。
夢の中で夢だと気付いたらドアを思い浮かべ、「扉の先は、自分の思い描いた自由な夢の世界だ」と信じましょう。
慣れると、ドアを介していつでもどこでも夢を自由に改変できるようになります。
【夢判別】映画『インセプション』の場合
映画『インセプション』にも、夢と現実を見極めるために登場人物たちがそれぞれ行っていた儀式(トーテムと呼ばれるアイテムを使用)を行っている描写がありました。
登場人物たちのトーテムは以下のようなものです。
- コマを回す:夢の中ではコマが回り続ける
- チェスの駒を倒す:倒した駒が起き上がる(?)
- サイコロを振る:ないはずの目が出る(?)
例えば、「いつもポケットに石を入れておき、それを握るクセをつけておく」といった方法もトーテムを用いた夢判別法と言えます。
いつも触れられる身近なアイテムであれば、どんなものでもトーテムになり得ます。
「トーテムは自分を明晰夢へ誘ってくれる」という自己暗示をかけることができれば、もう明晰夢をマスターしたと言っても大げさではないでしょう。
金縛りから明晰夢に入る方法とやり方
金縛りから明晰夢へ移行する方法を紹介します。コツさえ掴めば、すぐにでも明晰夢が見られるようになるはずです。
金縛りになる前には、必ず「前兆」があります。特に、「耳鳴り」はもっとも分かりやすいポイントでしょう。
金縛りはいきなり起こるわけではなく、前兆がある。およそ1~3キロヘルツ (kHz) の「ジーン、ジーン」または「ザワザワー」というような幻聴と、強い圧迫感を伴う独特の不快な前駆症状の数秒後~数分後に、全身の随意運動が不可能となる。
①見たい夢の内容を細かくイメージする
「イメージ段階」は、通常時の明晰夢でのイメージと同様なので、割愛します。
②睡魔に対抗して金縛り状態へと移行する
昼寝の時間帯(疲労で今すぐ眠れそう、または寝不足の状態のときなど)は金縛りに入る確率が高い印象です。
寝落ち寸前の状態で横たわり、静かに睡魔が襲ってくるのを待ちましょう。健康な状態でもいいですが、疲れているほうが明晰夢は見やすいです。
睡魔が襲ってきた瞬間を見逃さず、眠りに落ちてしまうのを阻止しましょう。
疲れているときには通常、意識と体が同時に眠りに入ります。しかし、睡魔にグッと耐えて意識だけを覚醒させることで、故意的に「金縛り状態」を作り出すことが可能になるんですね。
見たい夢をイメージしながら、「半分寝て、半分起きている状態」を故意的に作り出します。覚醒と睡眠のバランスは経験でコントロールしていくしかないので、気長に練習していきましょう。
覚醒50に対し、睡眠50をキープするようなイメージを持つと、入眠時のタイミングも掴みやすく、夢への移行もスムーズになります。
③金縛り時の恐怖を克服する
金縛りの状態になると、どうしても「恐怖心」が増大してしまうことがあります。しかし、その恐怖の正体は「金縛りに無意識に抱いているイメージ」であることがほとんどです。
金縛りに対して恐怖心があると、悪夢のような幻覚や幻聴を見やすくなります。幽霊とか、腹の上に誰か乗ってるとか、女が覗いてるとかですね。
とはいえ、実は幻聴や幻覚といった異変は、もう明晰夢一歩手前の状態とも言えるんです。脳内のイメージが幻聴や幻覚として、ひいては夢としてあらわれているわけですからね。
明晰夢の注意点
明晰夢では「興奮」しないこと
明晰夢に入った後でも、激しい興奮状態になると夢から覚めてしまうことがあります。
特に恐怖や怒り、または性的興奮状態などは「脳への影響が大きい」ので注意しましょう。
最初のうちは難しいですが、慣れていくと明晰夢状態での「感情コントロール」もだんだんとできるようになってきます。
明晰夢を持続させるコツは「平常心を保つ」ことです。どれほど異常で、面白く、刺激的な夢だったとしても、修行僧のように、さも当然であるかのように受け流すことが大切なのです。
決して、怒ったり、笑ったり、泣いたり、怖がったり、興奮したりしないこと。
一見矛盾しているようはありますが、夢の中で自由に行動し続けるためには「感情を殺しながら感情を感じること」が最大の秘訣と言えます。
明晰夢の危険性
心身へのダメージ
人には眠りの周期があり、熟睡しているときを「ノンレム睡眠」、浅い眠りのときを「レム睡眠」と呼びます。一般的に、夢を見るときはレム睡眠状態のときが多いとされています。
体調が優れないときや、普段は寝ないような時間に寝るときなどは浅い眠り(レム睡眠状態)が続き、夢を覚えていることが多いそうです。
つまり、夢を覚えている=熟睡できていないとも言えるわけですね。
明晰夢を見続けていると次第に睡眠の質が悪くなり、日常生活に悪影響を及ぼす危険性もあります。
脳が十分に休まっていない状態で活動を続ければ、精神はもちろんのこと、身体機能にも支障が出る可能性は十分にあると言えるでしょう。
悪夢を見続けてしまう危険性
明晰夢はとてもリアルな夢です。
楽しい夢であればさほど問題はないのですが、誤って悪夢に移行してしまった場合のショックは長く記憶に残り、精神的に大きなダメージを与えます。
結果、睡眠の質を著しく下げてしまい、自分の意思では夢をコントロールできなくなるばかりか、ひたすら悪夢が続いてしまうこともありえます。この点は十分に注意するようにしてください。
「夢日記」を書いて明晰夢の成功率アップ
夢日記を書くことで明晰夢の成功率が格段にアップします。面倒臭がらずに続けていくことが大事です。
きちんと夢日記を書いていると、夢の中での自己意識が高まり、夢の中で「これは夢だ」と自覚しやすくなります。
頻繁に見る夢の内容や場所、登場人物など、自分の夢のパターンを把握していると夢判別がしやすくなるという寸法です。
夢日記の書き方や危険性については、夢日記は本当に気が狂う?実際につけてみたら「もろはのつるぎ」だったでまとめています。
夢日記は本当に気が狂う?実際につけてみたら「もろはのつるぎ」だった
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まとめ
明晰夢はとても面白いものです。諦めずに練習を続けていけば、だんだんと夢をコントロールすることが可能になってくるはずです。
ただし、「明晰夢にハマりすぎて現実世界が無意味なものに思えてきた」などの兆候が出始めたら危険信号です。
本来、睡眠というものは脳や体を休めるためのものです。夢を意識的にコントロールすることで、脳は十分な休息を得られず、やがてエネルギー切れの状態に陥ります。
僕も約6ヶ月の訓練の末に「夢を自由自在にコントロールする技術」を手に入れましたが、だんだんと現実の世界にも悪影響が出始めるようになってしまった経験があります。
人の夢は、その人の体調の具合や精神状態が如実に現れるものです。
怖い、苦しい、悲しい、寂しいなど、潜在意識に負の感情が渦巻いているときには、残念ながら悪夢を見てしまう可能性が高くなります。
うつ気味の方や疲労が蓄積されている人、精神状態が悪い人は明晰夢の訓練、および実行は控えるようにしましょう。
一度でも夢のコントロール技術を身につけてしまうと、悪夢を見てもなかなか忘れることができなくなってしまうのでその点も注意してください。