iPhoneの標準ブラウザであるSafariに、iOS18の新機能として「気をそらす項目を非表示」というものが追加されていました。
分かりやすく言えば、広告ブロック機能が搭載された、ということです。たぶん言葉で説明するより、動画で観てもらったほうが早い。
実演「気をそらす項目を非表示」
URLの隣にあるアイコンから「気をそらす項目を非表示」を選択、それから非表示にしたい要素をタップすると、霧散するようなエフェクトとともに広告が消失する──。
Appleが"広告の駆逐"に本腰を入れてきた
いよいよ、Appleが本腰を入れてインターネット上に蔓延る広告の駆逐に舵を切ってきたようですね。
今までも広告ブロックのアプリはありましたが、今回の追加機能によって、特別な知識がない人でも手軽に広告を非表示にすることが可能になりました。
多くのユーザーが簡単に広告をオフにし、避けることができるようになると、当然ながら広告収入が減少する可能性があります。
この機能は、広告で食っているような企業あるいは人々にとって脅威となることが予想されます。特に、iPhoneユーザー率の高い日本では。
自分もインターネット広告で収益を得ている身なので決して他人事ではないものの、実際、有料の広告ブロックアプリを使っているのだから何も言えない。
これからの広告はどうなる
なぜ多くの人が広告を避け、ブロックしたがるのかというと、結局、「広告によって体験が邪魔されるから」という理由に行き着きます。
ユーザー体験を損なわず、広告自体が有益、または楽しめるもので、それがパーソナライズされたものであれば、ブロックはされないわけで。
つまり、これからは、ユーザー体験に邪魔な"質の低い広告"に依存している企業や個人は淘汰されていくということです。
しかし、これは必ずしも「広告型アフィリエイトが消滅する」とイコールではなく、あくまで「質の高い広告やコンテンツを提供する企業や個人が残っていく」ことで再編成が行われるということ。
考えてみれば、ごくごく自然な流れの一部のように思えます。
"質の高い広告"に必要なもの
では、どうすれば、それぞれのユーザーにとって有益で、パーソナライズされた質の高い広告を提供できるのか──。
答えは簡単、データです。何が好きで、どんなことに関心を持っていて、仕事は何時に終わり、家族構成はどうなっているか、結婚は、子供は、年齢は──といったパーソナルな情報。
これらを一箇所に集め、詳しく解析することができれば、「いつ、どこで、どのようなタイミングで、どういった広告を表示すればクリック率が高くなるかを推測することができます。
これからは、こういった個人的なデータを集める動きがより一層活発になっていくのでしょう。
完全にパーソナライズされた情報がもたらすもの
完全にパーソナライズされた情報や広告が当たり前になった未来を想像してみると、確かに生活が豊かになることは間違いないのだとは思います。
しかし、デザインされた「幸せ」と「楽しい」という概念でも触れた通り、消費者の需要よりも生産者の供給が先行している構図には、違和感を持たざるを得ない。
本来の自分が持っている価値観や観念が、提示される情報や広告によって捻じ曲げられるかもしれない。しかも、そのことに本人は気付かない。
それは、知らず知らずのうちに"自らの主体性"を"パーソナライズされた情報"に代理させることであり、自由を手放すことにも繋がります。
完全にパーソナライズされた情報、広告、あるいは生活が実現する未来は、ある意味、システムが人を支配する"超管理社会"。
まるでNetflix映画『アグリーズ』のような世界。システムによって実現される何不自由のない豊かで幸福な生活は、果たして人間にとって──。