HSP(Highly Sensitive Person)は、直訳すると「とても敏感な人」となります。
生まれつき他人の感情や周囲の環境の変化に敏感であるために、HSPの質を持つ人は以下のような特徴が挙げられます。
- 他人の感情に左右される
- ちょっとしたことですぐ疲れる
- ささいな一言でめっぽう落ち込む
そもそも、どうして自分のことをHSPだと疑ったのかというと、
- 「みんなは人とすれ違うときにどこを見ているんだろう?」という疑問が湧く
- ネットで調べていたら、「もしかして、あなたはHSPかも」という説が浮上する
- 何気なく「HSPのチェックリスト」を試してみたところ、27個中26個も当てはまってしまう
という流れがあったからですね。
HSP(Highly Sensitive Person)とは?
HSPとは、簡単に説明すると、「感受性がとても高く、生まれつき敏感な気質を持っている人」のことです。
HSPは5人に1人の割合で存在する
HSPの概念はもともと、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士の著書『The Highly Sensitive Person(世界17ヵ国にて発売中のミリオンセラー)』で提唱されました。
HSPは病気や病名というわけではなく、あくまで「気質」を表しています。また、アーロン博士の研究によると、およそ5人に1人がHSPである、との結果が出ているようです。
繊細さん診断テスト(チェックボタンつき)
次の質問に、感じたまま答えてください。少しでもあてまはまるのなら「はい」と答えてください。まったく当てはまらないか、あまり当てはまらない場合に「いいえ」と答えてください。
自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ
他人の気分に左右される
痛みにとても敏感である
忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる
カフェインに敏感に反応する
明るい光や強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい
豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい
騒音に悩まされやすい
美術や音楽に深く心動かされる
とても良心的である
すぐにびっくりする(仰天する)
短期間にたくさんのことをしなければならない時、混乱してしまう
人が何かで不快な思いをしている時、どうすれば快適になるかすぐに気づく(たとえば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど)
一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ
ミスをしたり物を忘れたりしないよういつも気をつける
暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
あまりにもたくさんのことが自分の周りで起こっていると、不快になり神経が高ぶる
空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる
生活に変化があると混乱する
デリケートな香りや味、音、音楽などを好む
動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している
仕事をする時、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる
子供のころ、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた
以上の質問のうち十二個以上に「はい」と答えたあなたはおそらくHSPでしょう。しかし、どの心理テストも、実際の生活の中での経験よりは不正確です。たとえ「はい」がひとつかふたつしかなくても、その度合が極端に強ければ、そんなあなたもHSPかもしれません。
出典:講談社『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』
12個以上のチェックが入っていたら、あなたはHSPである可能性が高いです。
HSPの特徴とは?
「HSPの特徴」をざっくりとまとめます。
- 涙もろい
- よく寝る
- 音に敏感
- 驚きやすい
- 痛みに敏感
- 想像力が豊か
- 車の運転が苦手
- 衣服の肌触りに敏感
- 暴力的な描写が苦手
- 空イヤホンをしている
- 香水などの匂いに敏感
- 他人の感情に流されやすい
- 一人になりたいと思うことが多い
ここからは、HSPである僕が「特に当てはまっている」と思う項目について詳しく紹介していきます。
一人の時間を好む
自分の時間を確保すること、とっても重要ですよね。それも、自分の中でトップクラスの優先順位の高さではありませんか?
感受性が強すぎるのか、人がいるところ——そうじゃなくても刺激のある場所は辛いです。とにかく、一人の時間が欲しい、一人になりたいと思ってしまうのです。
無意識のうちに、あちこちにアンテナを張って情報を仕入れてしまうので、勝手に心と頭が「アッ、しんどい」となってしまうのでしょうね。
別に、人が嫌いなわけじゃないんです。ただただ、疲れてしまう。そういう気質なんだ。わかってくれ。
音・匂い・感触などに敏感
音や匂い、視覚情報、感触といった刺激に敏感なのは、危険を察知する神経系の働きが活発だからです。
僕の場合は、耳と目が特に敏感です。基本的に「うるさい」のは嫌いなので、家でも耳栓を常備し、外では「空イヤホン」をしています。
人混みや激しい点滅にも頭がくらっとするときがあるし、電車に乗っているときも音漏れや人の会話がめっちゃ気になる(イライラというか、気持ちが悪くなる)し、同じ車両に喫煙者がいたら端っこだとしてもすぐにわかります。
ちなみに、秒針がうるさいので部屋に時計は置いていません。耳栓をしていても、まれに自分の心臓音さえうるさく感じることがあるので、そういうときはもっぱら「自然環境音(特に雨の音)」を聴いています。
あとは、光ですね。太陽の光だけではなく、蛍光灯ですら眩しくて目を開けられないということもあるので、サングラスの購入も検討しています。
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場の空気に敏感(読める)
場の雰囲気というか、人の感情というか、そういったものが「読める」傾向にあると思いませんか?
「あ、今はあんまり喋らないほうがいいな」
「この人は今こういうことを考えているな」
「きっとこの人はこう言ってほしいんだろうな」
「ちょっとこの人は気分が悪そうだから、こっちよりこっちの言葉を使おう」
例えるなら、多くの考えやプランがコンマ数秒の間にバッと頭の中に広がり、それを瞬時に選び取っているような感覚です。
まあ、僕はそういうことを考えている間に、結局「何も言わないほうがいいや」となってしまい、いつも「ただ黙ってるやつ」になってしまうのですが。
ただし、「感受性が高い」というのはメリットもあり、特に「チームの円滑剤としての役割」は得意です。
人間関係や仕事の割り振りなどの微妙なバランスを感じ取れるので、チームの士気管理や今後の方針を決めるのにはもってこいの気質と言えますね。
僕は最近、HSPから来る疲労の対処法として、「あえて周りからの情報を無視して行動している」のですが、結局、その「相手が言って欲しいことがわかっているのに、あえてそれを言わない自分」に罪悪感を覚えてしまい、勝手に「うわあ」となって本末転倒になっていることが多いです。
そのせいで「コミュ力がある人見知り」というヘンテコな評価を受けることもしばしば。空気が読めすぎるというのも考えものです。
よくも悪くも影響を受けやすい
「影響を受けやすい」というのは、メリットでもあり、デメリットでもありますね。
同じ空間に怒っている人がいれば自分も血圧が上がってくるし、不安になってる人がいると自分まで不安になってきます。もらい泣きはデフォルトです。
気持ちのいいアクション映画を観たあとは自分も気分が上がり、暴力的なシーンなんかは、もうなんというか「ヒエッ」となる。とにかく、「ヒエッ」となる。
その分、集中力の高い人が近くにいれば自分も集中力を発揮できるし、頭がいい人がいると自分までIQまで上がったような気にさえなるので、使いようによっては大きな武器になると言ってもいいでしょう。
疲れやすい(車の運転は特に)
HSP気質の人は、あらゆるアンテナを、あらゆる方向に展開させながら生きているので、相当な体力を消耗します。一日が終わることには、身も心もヘトヘトです。
何気ない誰かの一言の「真意」をあれこれと考えてしまったり、逆に自分の言葉が相手を傷つけていやしないかとビクビクしたり──。
疲れることがわかっているので外出も億劫になるし、外に出たら出たで、
「あ、トラックが前から来てるな。ドライバーさんはなんか急いでる? あ、こっちでは杖をついたおばあちゃんが横断歩道を渡りたがっているな。事故にならないかな? 大丈夫だよな、もしかして自分が何かしたほうがいいのか? いや、でもここに交番あるしな……いや、でもな……』
と考えてしまう。これがHSPの人の平常運転と言ってもいいんですよね。
どこにいっても、何をしてても、次々と新しい刺激が入ってきて、頭の中の言葉や考えがどんどん溢れ出してきて、感情や音、色といった身の回りのあらゆる情報が混沌としてきて、「ああ、もうこれはすごいや(すごいや)」となってしまうのです。
幸い、僕は視力が悪いので、外出するときは「あえてメガネ(コンタクト)をしない」ことが多いです。さすがに危険を感じる場面ではメガネをかけていますが、視力が悪いと目から入ってくる情報量が減るのでとても楽なんですよね。
あと、車の運転は特に疲れるので嫌いです。運転自体はできるものの、1秒たりとも気を抜く瞬間というものがないので、運転の後はどっと疲れます。というか、車そのものが怖い。うるさいし、怖い。
家電(機械)が壊れる
「HSPの周りでは家電が壊れやすい」というオカルトっぽい噂がありますが、正直、思い当たる節が多いです。
なぜか自分のときに限ってレジが故障したり、機械がおかしくなったり、周りの家電が異常を起こしたりすることが多いように思います。
まさしく「HSPというより、ESP(超能力)かな?」という感じなのですが、こればっかりは本当の話なので、もしこれが「HSPの気質」によるものだとしたら、HSPの人を何万人か集めて一気にストレスをかければ、ひとつの街の電気がこぞって消えてしまうのでは──と、壮大な妄想を繰り広げたりするのもHSPの特徴らしい。
しかし、ただの「思い込み」である可能性が高いです。「HSPが近くにいると(a)、電気製品が壊れやすい(b)」といったように、aとb──2つの変数間のリンクを過大評価( 錯誤相関)しているのでしょう。
「思い込みや先入観、固定観念などの認知バイアスがかかりやすい」というのも、もしかしたらHSPの特徴と言えるのかもしれませんね。
HSPとHSS(High Sensation Seeking)について
HSS(High Sensation Seeking=刺激を追い求める人)という、心理学者のマービン・ズッカーマンが提唱している性質もあります。
「とても敏感な人」のうち、約7割が「好奇心が弱く、敏感な人」で、残りの3割は「好奇心が強く、敏感な人」とのことです。
僕はおもむろにチャリ旅に出たり、海外をぶらぶらしてたりするので、おそらくHSPとHSSの混合型じゃないかな、と思っています。HSSのチェックリストもあります。
僕は見事に19個中18個という、「ああ、まあ、そりゃそうなるわ」という結果になりました(詳しくは筆者プロフィールから)。
HSPにもかかわらず、日本一のバンジージャンプや雪山リゾートバイト、自転車日本一周旅行、無人島で命綱なしで崖のぼり、初海外で移住、ビルからビルへのジップライン、海外事業の立ち上げ、キャンピングカーでアメリカ横断したりと、まあ、これ以上ないぐらい刺激を求めてきました。
HSP/HSSは「前のめりのまま後ろから引っ張られている」
HSP/HSSの両刀使いの僕の感覚としては、常に前のめりで走りながら、後ろから引っ張られてる感じとでも言いましょうか。右手でアクセル全開で回しているのに、左手ではブレーキを目一杯かけている、みたいな。
退屈は嫌いだし、刺激は欲しい──でも、刺激があったらあったで疲れるし、頻繁に「一人になりたい」と思うし、誰かといるのは楽しいし好きなんだけど、どうしても心と体が勝手に疲れてしまう、という"ヒジョーに面倒なこと"になっています。
心の中はいつも大荒れで、ひとたび平穏な時間が訪れると、また刺激を求めて大海原に出ていく——のだけれど、「うわあ! やっぱりダメだあ!」となって、すぐ帰ってきてはまた刺激を求めて──の繰り返しです。芸人かな。
HSP/HSSは特別天然記念物並に希少
HSPはおよそ5人に1人の約20%、HSSはHSPのうち約30%、つまり、人口の6%に該当します。日本人の血液型比率と比較すると、「AB型9.9%」よりも少ない計算(※日本赤十字社 2012年調べ)です。
少数派(マイノリティ)は一見「特別」なようですが、その実、「特別に孤独」なんですよね。周りから理解されることが少なく、悩みへの対処に関する情報も圧倒的に少ない(そもそも同じ悩みを抱えてる人が少ない)。
それでいて、HSPの人は自分がマイノリティだということを理解していて、なおかつ、どういう行動・発言をすればマイノリティにならずに済むかを理解してしまっているから、余計に疲れてしまうのです。
(HSP/HSSで、AB型である僕はいったい人口の何%に該当する「気質」の持ち主なんだろうか?)
HSPはサイコパス(精神病質)なのか?
「HSPってサイコパスっぽくない?」という意見があるのも理解できるのですが、HSPとサイコパスには明確な違いがあります。
サイコパスの最大の特徴は「良心の欠如」です。
- 他人の痛みに対する「共感」がまったくない
- 自己中心的な行動をして相手を苦しめることで「快楽」を感じることは合っても、「罪悪感」はいっさい感じない
サイコパスは、HSPとは真逆の性質を持つ概念と言ってもいいでしょう。HSPの人は、むしろ感受性が豊かすぎるゆえに、一般的な人に比べても「優しすぎる良心」を持っているケースも珍しくないのです。
物心ついたときから「自分はどこか変だな」とは思っていた
他の人と比べると、「自分は他の人と見ているところ・感じていること・考えていることがだいぶ違うな」と気づいたころから、周りの人と合わせるようにして生きてきました。
自分は変わっているということは理解できるし、どういうことをすれば変なのか、どういうことを言えば変じゃないのかも、わかる──。
でも、それがわかってて口に出してしまうと「これは本当の自分の言葉なのか?」と自己嫌悪に陥り、あえてそれを言わないとしても「自分は嘘をついてしまった」と自己嫌悪を覚えるのです。
そういうことを繰り返しているうちに、「本当の自分って?」となってしまい、もう何がなんやらという感じで、なんとか生きています。
まあ、僕はもともと「宗教2世として幼少期から16年間も教育されてきた」という歴史もあり、また、中学3年間はいじめられて過ごしていたので、そういった意味でも人と違う自覚はありますが。
HSPはうつ病などの精神疾患になりやすい?うつ病との違いについて
HSPはうつ病などの精神疾患と間違われやすいですが、あくまでも「気質」なので、病気ではありません。
- HSP「気質」:生まれながらに持っている感受性や気分の傾向を表す、先天的なもの。
- うつ病「病気」:人間関係などの環境の変化などによるストレスから発症する、後天的なもの。
うつ病の特徴としては、発症に伴い、考え方や性格、思考が大きく変わるなどの変化が見られること、あるいは「自殺願望(希死念慮)」の症状が見られることです。
HSP診断テストの中には「精神疾患」の特徴と共通するものも多いので、あまりに悩んでいたり、生活に支障が出ている場合には精神科、もしくは心療内科を受診しましょう。
僕は「悪夢ばかり見る」ことをどうにかしようと精神科を受診し、そこで初めて自分が「深刻なトラウマ(PTSD)とうつ病」を抱えていることを知りました。
体の病気と一緒で、精神の病気も早期治療をすることに越したことはないので、少しでもおかしいなと感じたらぜひ専門機関へ足を運んでみてください。
初めての精神科で「うつ病」と診断された28歳フリーランス男の話を聞いてくれ
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まとめ
正直、僕は「あなたは○○です」という風に人を分類するのがあんまり好きではありません。「そもそも現代人──というより人間なんて、誰しも何かしらの精神病患者に分類されてもおかしくない」というのが持論だったので。
でも、やっぱり「自分以外にも困ってた人はいたんだ」と思えると、めちゃくちゃ楽になります。肩にずっしりと乗っかっていた2トンぐらいの重しが、バビョーンとどこかへ飛んでいってしまったようで。
とはいえ、今まで謎だった自分の気質が「HSP」というカテゴリーに分類できるということが判明したので、これからはそれに合わせて生き方を試行錯誤していけばいいだけのことです。
幸い、同じような悩みを抱える人は実はたくさんいて、「HSPなりの生き方」も研究されています。あとは、自分にぴったりの処世術をその中から選び取って、実生活にあてはめていけば「生きづらさ」はだいぶ軽減できるはずです。
HSPという気質は生まれつきのものなので、一生変わることはないし、人よりも疲れやすいことも事実ですが、考えようによっては「HSPの気質」をプラスに転換できることも可能なはずです。
控えめに言っても、「自分がHSPだということがわかった」ということは、過去十数年の中でもっとも価値のある事柄だったように思います。
問題がわかればあとは対処するだけなので、作業としてはめっちゃ楽です。敵が見えない闘いほど恐ろしいものはないですから。
「あ、自分HSPかも」と思った方は、ぜひ『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』を読んでみてください。僕自身、この本で心がかなりラクになりました。レビュー評価が高いのもうなずけます。
- イヤホンが落ち着く心理とは?聴覚が敏感な人は「空イヤホン」で音を遮断しよう
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via:Are You Highly Sensitive?, High Sensation Seeking Test, もしも戦隊ヒーローのひとりがHSPだったら