多言語モデルのAIに「英語で考えて日本語で答える」プロンプトを与えると、出力品質が向上するケースがあるらしい。
たとえば、DeepSeek-R1(中国製の高性能LLM)のDeep Thinking(推論)モードでは、中間生成テキストに中国語が混入することがある。ここで「英語で推論ステップを生成し、日本語で回答する」よう指示すると、情報の整合性が改善される傾向が見られるという。
Gemini 2.0の実験的機能を使っている際、まれにドイツ語が混じる現象を観測した(筆者環境での事例)。これは多言語モデルが特定タスクで最適な言語パターンを選択している可能性を示唆しますが、あくまで推測の域を出ません。
DeepSeek R1、日本語で入力すると中国語で思考するんだが、このときに情報の欠落が発生するようで、プロンプトの頭に"think in English, output in Japanese: "と入れて英語で思考させると良いらしい。
(某大型掲示板より)
効果的なプロンプト設計?「Think in English → Respond in Japanese:」
基本形の「think in English, output in Japanese:」が効かない場合、より明確な構造化が有効かもしれません。実験的に効果を確認したバリエーションを紹介します。
Think in English → Respond in Japanese:
あるいは
Generate reasoning steps in English → Final answer in Japanese:
これらのフォーマットが有効な背景には、LLMの「タスク分離処理特性」が関係していると考えられます(完全な動作原理解明にはさらなる検証が必要)。
プロンプト設計が機能する技術的背景
- 英語データの量的優位性:学習データの60%以上が英語のため、複雑な推論タスクで高精度パターンを参照可能
- タスク構造の明確化:推論プロセスと出力生成を分離することで、各段階に最適な言語処理を誘導
- 情報伝達の最適化:英語→日本語の疑似翻訳プロセスが、情報の構造化を促進
- 記号の視覚的効果:矢印記号が人間可読なタスク分離指示として機能
端的に言えば、以下の通り。
- 英語圏の豊富な学術データを推論に活用しつつ、日本語出力の形式最適化を図る二段階処理
- 中間生成テキストの言語統一が、最終出力の一貫性を向上
- マルチリンガルモデルの「言語横断処理特性」を利用した精度改善
LLMは言語を思考しない。単に膨大な確率計算でトークンを並べるだけ
この現象は「AIの思考言語」というより「データ分布とプロンプト設計の相互作用」と解釈するのが適切でしょう。人間の言語処理とのアナロジーは興味深いですが、LLMは本質的に異なる統計的パターン処理機構で動作しています。
なんというか、魔法の言葉というロマンティックな表現は、プロンプトエンジニアリングを無駄に神秘化してしまう気がします。現実はもっとドライ。
LLMは言語を「思考」せず、ただ膨大な確率計算でトークンを並べているに過ぎない。
英語指定が有効なのは「倫理観」ではなく「英語データの統計的優位性」の結果でしかないのです。人類がすべきなのはAIの擬人化ではなく、「確率計算機の特性を理解した上での最適化」という地に足のついた対話なのかもしれません。
いやはや、僕も気をつけなくては。