o1と同等レベルのハイスペックモデルDeepSeek R1がMITライセンスでリリースされました。は? ヤバすぎだろ常識的に考えて。これがどういうことか、AIにさほど詳しくない人も分かりやすく説明すると、以下のようになるかと思います。
「IQ130相当のChatGPTみたいなモデルが中国から無料で出てきた。ちなみに、商用・非商用問わず、自由に利用、複製、変更、配布、販売することが許可されている」
また、API(ソフトウェア同士をつなぐ窓口やルールのようなもの)の料金もo1の30分の1ほどです。めちゃくちゃ安い。
しかし、このDeepSeek、中国産LLMということもあってか、日本では特に「過剰なリスク判断」が目立っている気がするんですよね。
確かに、中国の法制度や監視体制の特性を考えると慎重に扱うべきものではあると思います。とはいえ、どこが本当のリスクかを判断せず、ただただ「中国、怖い!」と無闇矢鱈に恐れるのはナンセンスであると言わざるを得ません。
中国AI怖い病
たとえば、DeepSeekの以下のような利用規約に対して恐怖する人がいるようで。
DeepSeek https://deepseek.com
・入力内容と出力内容は、サービス改善のために使用される可能性があります
・データは中国本土のサーバーに保存され、中国の法規制の対象となります
・(中国の)法執行機関などへの情報提供が必要になる可能性があります
・アカウント情報の漏洩や不正使用のリスクがあります
・アカウントの漏洩による損失は全てユーザーが負担することになります
内容自体は多くのオンラインサービスやLLMプラットフォームで一般的な条項ですね。具体的なポイントを整理して見てみましょう。
- データの保存と中国法規制
中国企業が自国サーバーにデータを保存し、国内法に従うことは、GDPR(欧州)やCCPA(米国)など他地域のデータ保護法と同様、法的要件を満たすための正当な対応。ただし、中国の「国家保安法」や「サイバーセキュリティ法」では、政府によるデータアクセス権限が広範に認められており、この点が他国との制度的差異として懸念材料となり得る。 - 法執行機関への情報提供
裁判所や政府機関の要請に応じてユーザーデータを提供する条項は、米国のCLOUD ActやEUの司法協力枠組みと類似している。しかし、中国では司法の独立性が制約される政治体制下にあるため、情報提供の基準や透明性に疑問が残る可能性がある。 - セキュリティリスクの明示
アカウント情報の漏洩リスクや損失の自己負担規定は、多くのサービス規約に見られる表現。ただし、中国企業の場合、政府によるデータアクセスが技術的バックドアを通じて行われる可能性への懸念(例:中国の「暗号化規制」)が、ユーザー側の不信感を助長し得る。 - 違法性の有無
規約内容自体に明らかな違法性はなく、世界的なプラットフォームの標準的な条件と大差ない。問題はむしろ、中国の法制度や監視体制の特性が、ユーザーデータの扱いにどのような影響を与えるかという点にある。たとえば、中国政府が「国家安全」を理由に恣意的なデータ要求を行う可能性は、欧米企業に比べて高く認識されがち。
要するに、だ
要するに、「規約自体は一般的な条項。ただし、中国の法執行環境に対する信頼度が選択の分かれ目になる」ということ。
チャットサービスや公式API経由の入力情報が収集・利用される可能性は、特定企業に関わらずクラウドAI利用における普遍的なリスクです。OpenAIが公式にAPI利用監視と規制事例を公表している事実からも、これは業界標準的な対応と言えるでしょう。
なんていうか、それって、特定の国や企業ではなく、クラウドサービスの特定におけるリスクなんですよね。ここを切り分けて考えられない人が多いために問題が複雑化してしまい、機会損失に繋がっている節が否めません。
それにMITライセンスのオープンモデルで公開されているのだから、DeepSeek-R1をセルフホストして利用すればいいし、大規模モデルの導入が困難なら軽量化モデルをローカルで実行する選択肢もある。
DeepSeekはモデル開発におけるトレーニング手法やナレッジを論文で詳細に公開しており、技術的知見の共有という点ではむしろ評価するべきポイントが多いと言えるのではないでしょうか。
要するに、これは「中国の法執行環境に対する信頼度が選択の分かれ目」という話であって、「中国AI怖いよね」と簡単に結論付けてよい話ではないと思うのです。批判的な警戒ばかりで正しく恐れる方法を知らないと、提供されるリソースを有効に活用できないので。
バックドアを仕込まれる可能性
なるほど、こういう可能性もあるのか──。
恐らく今後は素朴にオープンソースモデルを使うことは国家安全保障上のリスクやセキュリティのリスク(例えばバックドアを仕掛けられてるかもでそれを確認するのも取り除くのも難しい)があるのでどんなに、能力が高くても信頼できる機関が開発したAIを国内で開発するソブリンAIが大切になってくる。
結論
- 「中国産LLMであること」を理由に違法性や不適切性を指摘する根拠は薄いものの、地政学的リスクやデータ主権の問題は無視できない。
- ユーザーは、自国のデータ保護法(例:日本ならAPPI)との整合性や、中国政府の介入リスクを勘案した上で利用を判断すべき(ChatGPTにも当然そうすべき)。
- OpenAIやGeminiではじかれるような叡智な話題についても反応してくれるのは大きなメリット()
中国がO1と同等で30倍安いMITライセンスモデルをリリースすることは私のビンゴカードにはなかった
🚀 DeepSeek-R1 is here!
⚡ Performance on par with OpenAI-o1
📖 Fully open-source model & technical report
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— DeepSeek (@deepseek_ai) January 20, 2025