AIがデータのリサーチや整理、収集を担うようになっていくにつれ、人間の役割が「選択・評価・価値判断」といったキュレーション的な部分にシフトしていくというのは、ごく自然な流れなのだが、AIを日常的に使っている人ほどこの感覚が分かっているというか、もう無意識レベルで「何を当たり前のことを」と思うまで自分の深いところまで浸透している気がする。
OpenAIのDeep Researchを代表として、LLMや情報検索ツールは、大量の情報を収集・分類・要約することに優れている。それは人よりも、圧倒的に。たとえば、一般の人間であれば、50か国語のニュースや論文を収集しながら要約するのはまず無理であろうし、企業であっても顧客一人ひとりの細かいフィードバックをカテゴリ別に整理して対応や対策を講じるのも人力ではまず無理。
おそらく、現在でも大多数の人は「情報の取得・整理はAIのほうが得意だよね。ここは人間が時間をかけてやる必要性が下がってくるよね」という話に同意すると思う。ただ、この先の話になると、「AIによる仕事の変化」に対して強い拒否感を示す人も一定数いるように感じる。
AIは情報の取得や整理が得意である。よって、人間の仕事はその中から「何を採用するか」の決定になっていく。
こう聞くと何もおかしいところはない当たり前のことなのではあるが、実際、ホワイトカラーの仕事の多くはこうした情報の収集や整理、リサーチの部分であり、なおかつそれは意識的に意識するようなものでないから、どうしても仕事の本質とは異なるという錯覚を抱いてしまうのかもしれない(自分も含めて)。
ただ、これもごく当たり前のことではあるものの、データのどれが重要か、どれを採用すべきかといった事柄を最終的に判断するのは人間なわけで、むしろ、その前段階のリサーチの大部分はAIに任せたほうが合理的。ただ、人間がフィルタリングしないとバイアスや誤解の余地がある部分もあるので、完全に「邪魔」になるとは言い切れない。
だから「人間はこれからキュレーターみたいな役割」になっていくよ、というのは猫はかわいいよというぐらい当たり前のことであるから議論の余地さえないんだけど、これはなぜか「AI生成」の話になると「AIが人間の仕事を奪う!」「AI反対!」となるのは人間の非合理的で非常に面白く、機械にはない魅力のひとつなのかもしれない。言うてイラスト、翻訳、音声、音楽、ChatGPTの回答ひとつひとつに至るまで余すことなく"生成"だから。結局、これからの人間は、生成されたものから選ぶことが仕事になるます。
AIは選択肢を提示することは得意でも、どれが最適かという個人にフォーカスした価値判断は"まだ"不得意であるため、人間のキュレーター的な役割は強まっていくと考えるのが妥当。というのも、AIはまだ文化的、社会的な文脈で深く理解するのは難しい(これはおそらくすぐに解決される)。また、仕事(あるいは日常のあらゆる場面)においては往々にして論理的か、正確な分析かどうかというより、どんなストーリーを伝えるか、何を重視するかといった判断と決定が必要。あとは、情報が誤解をもたらすリスク、あるいはバイアスが含まれるリスクを考慮することも人間のほうがまだ得意。
実際、リサーチに近い部分の仕事や発信(たとえばニュース番組など)ほど、もう人間の手を早く離れたほうがいい。事実は事実として報道されるべきだと思うんだけど、編集の仕方や見出しのつけ方、強調の仕方によってイデオロギー的な要素が混ざりすぎてしまうことが多い。その結果、ニュースが単なる情報提供ではなく、特定の見方を押し付けるものになりがち。
──で、これまで膨大な人員、時間、コストなどのリソースが割かれていた領域の労働がAIに代替される形となり、人間の仕事がキュレーター的な役割になっていくと、会社を経営する立場としては「あれ?こんなに人いらんくね?むしろAIをもっと動かしたいから人件費削ってGPUとエネルギーにつぎ込むわ」となるのは当然。一気に全員を解雇するということは起きないとは思うけれど──。
ただし「日本では雇用が守られてるから安心」とするのは危険。実際は、「正当な理由のない解雇は難しいが、不可能ではない」。直接的な解雇は法的リスクが高いため、おそらく今年中にもいろんな企業で希望退職、あるいは退職勧奨のような形で自主退職を促すところが出始めるんじゃないかなと。それでも減らせないようなら業務内容の変更で圧かけたり、法的要件を満たしながらのリストラ。この流れはもうどうにも止まらない気がする。
個人でもAIの力を借りて、これまでにないスピードで高収益のビジネスを立ち上げられる土壌ができつつあるから、企業に依存するスタイルを貫く必要性も相対的に下がってくるだろうなとは思うものの、日本がその方向にどれだけ舵を切れるかはまったく分からない。感覚的には遅そうではある。ただAIの進化はそんなこと関係なしに爆速でアカこうらを各地にぶん投げまくりながら無敵スター状態で社会のルールや前提を塗り替えていくから、もはや日本がどうとかそんな細かい話はもう議論することすらすでに見当外れなのかもしれない。
要点まとめ
- AIの役割の変化
- AIがデータの収集・整理・要約を担うようになり、人間の役割は「選択・評価・価値判断」にシフトしている。
- AIを使いこなしている人ほど、この変化を無意識レベルで受け入れている。
- AIのリサーチ能力と人間の役割
- AIは大量の情報を処理するのが圧倒的に得意。
- 企業のデータ整理やリサーチもAIの方が合理的。
- ただし、人間がフィルタリングしないとバイアスや誤解の余地がある。
- 人間のキュレーター化
- AIが情報を整理し、人間は「何を採用するか」を決める仕事に移行。
- これが自然な流れにもかかわらず、AIが「生成」に関わると拒否反応を示す人もいる。
- AIは選択肢の提示は得意だが、価値判断や文化的・社会的文脈の理解はまだ不得意(ただし、すぐに解決される可能性あり)。
- ニュースと情報発信の変化
- AIによるリサーチや報道の自動化が進めば、ニュースのイデオロギー的なバイアスが軽減される可能性がある。
- 事実をそのまま伝える報道が望ましいが、編集や強調の仕方で偏りが生まれている。
- AI導入による雇用の影響
- AIが業務を代替し、企業は「人を減らし、AIを活用する方向」にシフト。
- 希望退職や業務変更を通じたリストラが進む可能性が高い。
- 「日本では雇用が守られているから安心」とするのは危険な考え。
- 個人と企業の関係性の変化
- AIの活用により、個人でも高収益のビジネスを立ち上げやすくなっている。
- 企業に依存しない働き方の選択肢が広がるが、日本がその流れに乗るかは不透明。
- AIの進化のスピード
- AIは「無敵スター状態」で社会のルールや前提を急速に塗り替えている。
- もはや「日本がどうするか」を議論するより、適応することが重要。
全体として、「AIの進化に適応するかどうか」が今後の鍵になる、という流れ。
まさにこの図。
Deep Researchにより、「人類の知の限界」を素早く知ることができるようになった。
そしてその先の「人類がまだ知らないこと」を明らかにするのが博士号の意義であり、この先さらに重要性が増すと考えている。 https://t.co/l1xrcwc9Ki pic.twitter.com/AuvZuyjrYp
— Daichi Konno / 紺野 大地 (@_daichikonno) February 7, 2025