月の終わりに本の購入代を見返すと、「えっ、こんなに使った覚えないよ」と思うものの、いざ計算してみるとしっかり使っている──。
この現象のことを、僕は「キンドル・ホイホイ」と呼んでいます。ワンタップで本が買えるとか、世もジェフ・ベゾスですね。
さて、あなたは「本を読むと学力が上がる」「読書量と年収は比例する」という話を聞いたことがあるでしょうか?
他にも「本を読む時間が人を成長させる」「本を読むと人生がより充実する」「読書で人生はより幸せなものになる」といった話を。
ああいう話はどこまでが本当で、どこまでがウソなのでしょう? 気になったことはありませんか?
普段からほとんど本を読まない人からすれば、確かに「読書はお金と時間の無駄」だと感じるかもしれません。
まったくもってその通りです。正直に言うと、「読書はお金と時間の無駄」は半分正しいのです。
それでも、僕はこれからも読書をやめるつもりはありません。
今回は、「読書と年収に関係はあるの? 学力にも影響する?」という疑問を解決していくとともに、「僕が『読書は金と時間の浪費である』と半分認めながらも、読書をやめない理由」を話していきます。
「読書はお金と時間の無駄」は半分正しい
結論から申し上げると、「本を活かすも殺すも、読み手次第」ということです。
身も蓋もない話ではありますが、読み手の読解力がなければ、どれだけ内容の素晴らしい良書でも悪書になってしまいます。
以下、「実は『読書』はお金と時間の無駄なのでは?」という意見の根拠と思えるデータです。
24時間後には74%忘れる
上の図は、人の記憶の忘れっぷりをグラフに表した「エビングハウスの忘却曲線」です。心理学者のヘルマン・エビングハウスが行った実験が元になっています。
実験では、「人間は一度覚えたものでも24時間後にはおよそ74%忘れる」ということが判明しています。つまり、そもそも頑張って本を読んだとしても、一日経てば内容のほとんどを忘れてしまうのです。
正直、僕も読んだ本の内容はほとんど忘れてしまっています。控えめに言っても、内容の8割ぐらいは忘却の彼方。どうせ忘れるものにお金を払っている、というのは事実です。
行動しなければまるで意味がない
本の内容を理解できたとしても、その知識をまったく活用せずに過ごしていれば、それこそ「お金と時間の無駄」と言えるでしょう。
確かに「知識を得ること」は大事ですが、もっとも重要なのは「その知識を得て何がしたいのか」という点なのではないでしょうか?
何も読書に限った話ではないですが、自己成長のための勉強は「知識を吸収し、行動に移し、結果を得る」までがワンセットです。
そもそも、大多数の人間は知識を得るだけで満足してしまいます。成功への近道は、行動にこそあるのです。
読書が成功に直結することは100%ない
ゆえに、読書が成功に直接結びつくことは100%ありません。ここだけは間違いなく、はっきりと断言できます。
結局のところ、本が「真」に活きるときは、行動に移したときです。100冊の本を読んで"1"行動しないAくんより、1冊の本を読んで"100"行動するBくんのほうが限りなく「成功」に近いのは当然でしょう。
というより、読書で成功を手に入れようとする行為自体が間違いなのかもしれません。行動しなければ、状況は何ひとつ変わることはありませんからね。
本当に必要な情報なんて全体の20%もない
自己研鑽のために読書をする。ああ、なんと甘美な響きなのでしょう。
しかし、先にも述べた通り、一日経てば本の内容のほとんどを忘れてしまうわけです。当然、たった一回の読書でその本のすべての内容を完全に理解することもできないでしょう。
本の購入代だってバカにならないし、一度読んだぐらいでは完全に理解するのも難しい、挙句の果てには、せっかく読んでも忘れてしまう──?
「そんなものに時間とお金を使うなんて、無駄以外の何物でもない」と思ってしまうのも、無理はないのかもしれませんね。
読書はお金と時間の無駄ではない?
ここまでは、「実は読書はお金と時間の無駄なのでは?」という話でした。
- 頑張って読んでも、どうせ忘れる
- 知識を得ても、行動しなければ意味がない
- 「自分にとって本当に必要な情報」はごくわずか
ここからは、「いや、読書は素晴らしい投資活動だ」という話です。
「読書量と年収は比例する」は本当か?
世帯年収が高いほど読書量が多い傾向がある
2009年のかなり古い資料ですが、出版文化産業振興財団によると、「世帯年収が高いほど読書量が多い傾向がある」ということが分かっています。
「1ヶ月に読む本の平均冊数」と「世帯年収」の関係を見てみると、
「1ヶ月間に最低3冊以上本を読む」と回答したのは、
- もっとも多い(40.5%):世帯年収1,500万以上の人
- もっとも少ない(22.6%):世帯年収300〜500万未満の人
「1ヶ月間に1冊も読まない」と回答したのは、
- もっとも多い(28.8%):世帯年収300〜500万未満の人
- もっとも少ない(9.5%):世帯年収1,500万以上の人
「1ヶ月に1冊も本を読まない人の読書をしない理由」でもっとも多いのは、「仕事、家事、勉強が忙しくて本を読む時間がない」でした。
この結果を見せられると、むしろ「時間がないから本を読まないのではなく、本を読まないから時間がないのでは?」とも考えられるかもしれません。
お金持ち(富裕層)の習慣と読書の関連性
次は、「お金持ちの習慣」と「読書」の関連性についてです。
トーマス・コーリー(Thomas C. Corley)は、5年間にわたって「お金持ちの習慣とは何か?」という研究を行い、233人の裕福な人と128人の貧しい人を対象に「あなたの豊かな習慣は何ですか?」というアンケートを実施1しました。
「自分は読書が大好きである」という問に同意したのは、裕福な人々が86%、貧しい人が26%でした。
- 裕福な人:年間所得1,760万円以上、資産3億5千万円以上
- 貧しい人:年間所得385万円以下、資産55万円以下
※1ドル=110円で計算
この研究で判明した「読書と豊かな習慣の関連性」は、以下の通りです。
- お金持ちは読書が大好き
- 裕福な人は自己研鑽に貪欲
- 読むのはもっぱらノンフィクション、特に自己啓発本
- お金持ちの88%が毎日30分以上を自己成長のための読書に充てているのに対し、貧しい人はたったの2%
読書量と年収の関係性については、「読書量と年収は比例する」のウソ?人生によい影響をもたらす本とは、にて詳しくまとめています。
「読書量と年収は比例する」のウソ?人生によい影響をもたらす本とは
続きを見る
「読書量と学力は比例する」は本当か?
文部科学省の平成28年度全国学力・学習状況調査の結果によると、「『読書が好き』と答えた子供ほど、国語と算数のテストの得点が高い」ということが分かっています。
「学力」の定義にもよりますが、少なくとも、知識量や読解力、集中力という意味では「読書量と学力は比例する」と言えそうです。
世界の読書時間ランキング
一週間あたりの読書時間を調査した結果、日本は30ヶ国中ワースト2位でした。
1.インド 10.7時間/週
2.タイ 9.4時間/週
3.中国 8時間/週
7.ロシア 7.1時間/週
16.オーストラリア 6.3時間/週
23.アメリカ 5.7時間/週
26.イギリス 5.3時間/週
29.日本 4.1時間/週
30.韓国 3.1時間/週
トップのインドが10.7時間というのに比べ、日本はたったの4.1時間です。しかし、世界のIQランキングで見ると、日本が4位、インドが25位という不思議です。
そもそも、「地頭がいい」ことと、「知識量が多く、発展的にものを考えられる」ことは別の話なのでしょう。
日本人は識字率が高いので、ちょっと本を読めば、地頭が悪くても多少ましにはなりそうです。
読書は立派な「投資活動」である←これ
読書によって「その他大勢」の上には行ける
読書をすることによって、「その他大勢」から抜きん出ることは可能です。
文化庁の調査(平成25年度)によると、なんと47.5%もの人が「月に1冊も読まない」と回答しています。
つまり、「月に1冊以上の本を読むだけで、上位50%には食い込める」のです。別に、他の人より偉いだとか、頭がいいだとか、そういう話ではありません。
統計上は、頭がいい人も、お金持ち(富裕層)も<ruby>少数派<rt>マイノリティ</rt></ruby>です。しかも、そういった人たちには「読書」という「共通の習慣」があります。
ともすれば、「少数派──つまり、読書をする側に回ったほうがいいよね」ということです。そう考えると、読書は立派な「投資活動」と言っても過言ではないのかもしれません。
本で解決できない悩みはない
「時間がない」「仕事で出世したい」「幸せに生きたい」「もっと愛されたい」
人間の悩みや興味の矛先なんて、昔から大して変わりません。たいていは、恋とか、仕事とか、人間関係とか、普遍的なものです。
そういった「人間が心の根底に抱える悩み」に、応え続けようとしてきたのが「本」なのです。
仕事、お金、人間関係、幸せ人間の悩みなんちゅうのはいつの時代も同じや。
夢を叶えるゾウ2
そんで本ちゅうのは、これまで地球で生きてきた何億、何十億ちゅう数の人間の悩みを解決するためにずっと昔から作られてきてんねんで。
その『本』でも解決でけへん悩みちゅうのは何なん?
自分の悩みは地球初の、新種の悩みなん?
自分は悩みのガラパゴス諸島なん?
僕がそれでも読書をやめない理由
そもそも読書は娯楽
ここまで、読書に関していろいろなデータを引っ張り出し、あーだこーだと言ってきましたが──。
ぶっちゃけ、どうでもいい。
僕にとっての読書とは、ただの娯楽であり、趣味です。それ以上でも、それ以下でもありません。
アニメやゲームと同等のレベルです。楽しいから読む。つまらないなら読まない。
そもそも、どんなことでも楽しくないと続かないです。無理して読んでも集中力が持ちませんし、吸収率が悪いばかりか、それこそ「金と時間の無駄」です。
目標を持つことは大事ですが、それが義務感にすり替わってしまうと、途端に苦しくなってしまいますからね。読みたいときに読むからこそ、楽しいし、吸収率も上がるし、続くのだと思います。
行動のきっかけになる
僕自信、「お金持ちはたくさん本を読んでいるらしい! じゃあ、たくさん本読めばお金持ちになれるな!」という動機で、本を読みまくっていた時期もありました。
最初のうちは「読書してるワイ、知的でカッコいい」という感じで無理して読んでいたんですが、途中から、読書という行為そのものが楽しくなってきたんです。
新しい知識を取り入れることはもちろんそうですし、行動のきっかけにもなります。いい本に出会うと、モチベーションが「ぐわっ」と上がることがありますよね。
今でも自己啓発本をたまに読みますが、そういった本を選ぶのはモチベーションを上げたいときぐらいです。「知識を得る」という目的で読むのは、専門書ばっかりですね。
「お金と時間の無駄」にしないための読書術
以下は、僕がいつも心がけている読書術というか、効率よく本を読むときのコツみたいなものです。
小説やラノベのような単なる娯楽が目的ではなく、あくまで「自己研鑽が目的」の場合です。
- タイトルと目次をバーっと見て、本の内容をだいたい把握
- その本から学びたいこと、解決したいことを決める
- ざっと流し読みし、気になる章だけしっかり読む
読書は、このぐらい大雑把でいいのです。本にもよりますが、一度の読書で使う時間は15分〜3時間ぐらいと"まちまち"です。
ちょっと読んでつまらなかったら途中でも読むのをやめますし、第一、そんなに集中力が続かないので、あえて時間を小さく区切って読書に充てています。
一度の読書で多くを吸収しようとしないことがポイントです。
「ちゃんと読まないとお金がもったいない!」と思うのも無理はないですが、どうせ次の日には内容のほとんどを忘れてしまいます。
それならば、最初から本を読む目的や得たい情報をバシッと決め、集中力が続く短い時間で本を読んだほうが効率がいいでしょう。
別に、「一度の読書で本の内容をすべて理解できなきゃ死ぬ」というルールはないので、つまみ食いのような読み方でも、複数回に分けて読んでも、まったく問題ないのです。
まとめ
確かに、本で解決できない悩みはないかもしれないし、お金持ちになれるヒントも見つかるかもしれません。それでも、たかが読書なのです。
読んだ本の数は人と比べるものでも、人に自慢するものでもありません。読みたい人は読めばいいし、読みたくない人は読まなくていい。
こうしている間にもあらゆる言語で、あらゆるジャンルの、あらゆる本が毎日のように出版され続けています。一生かけても読み切れないほどの本が、です。
そのうちのたった1冊を読んだぐらいで、まるで世界のことを知ったような気になって、無知を恥じないばかりでなく、あろうことか他人を見下すなんて、あまりに滑稽だとは思いませんか?
以上、「読書なんて、娯楽のひとつ。暇つぶしのためのコンテンツにしか過ぎない。でも、楽しいから今から本読もう?」という話でした。