天才の暗記術「記憶の宮殿」の作り方!シャーロックやハンニバルも実践していた

「記憶の宮殿(メモリーパレス)」とは、「頭の中にある"記憶の宮殿"を訪れることで、いつでも自由に"記憶"を引き出すことができる」という暗記術です。

「記憶の宮殿」は「座の方法(ローマンルーム・メソッド)」とも呼ばれ、

「頭の中に作った"場所"に、記憶を思い出すための"トリガー(キーワード)"を置いておく」

といった方法によって、記憶をいつでも自由に引き出すことを可能としています。

「記憶の宮殿が作れるのは天才だけなんでしょ?」と思った方も安心してください。

コツさえ分かってしまえば、誰でも、頭の中に「自分だけの記憶の宮殿」を構築することができます。

「記憶力を鍛えたい」
「覚えなきゃいけないことがある」
「思い出せないことが増えてきた」

──など、「記憶」に関しての悩みがある方は、ぜひ「記憶の宮殿」の作り方を実践してみてくださいね。

「記憶の宮殿」は「世界最古の記憶術」

「記憶の宮殿」は、今から約2,500年前、古代ギリシャの詩人シモニデス(紀元前556年頃 - 紀元前468年)が用いた方法1とされています。

ある日、詩人である「シモニデス」は、スコパースという貴族の邸宅に招待され、いつものように大勢の貴族とともに食事をしていた。

シモニデスが人に呼ばれて外に出ていたとき、突如としてスコパース宅の天井が崩落し、主人のスコパースや親族の全員が瓦礫がれきの下敷きになって死亡してしまった。

残されたスコパースの身内が彼らを埋葬しようとするも、遺体の損傷が激しく、誰が誰なのか見分けがつかない。

しかし、シモニデスは誰がどこに座っていたのかを記憶しており、遺体の位置から身元を判別した。

「場所」を手がかりに記憶を思い出す方法を用いたシモニデスの活躍によって、遺族たちは無事に全員を埋葬することができたのだった──。

この出来事をヒントに、シモニデスは「鮮明な記憶は順序(場所)によってもたらされる」ことを発見し、「世界最古の記憶術」となる「記憶の宮殿」を作り出したのです。

場所法、マインドパレス、メモリーパレスとも呼ばれる

「記憶の宮殿」の別名は、

  • 場所法、LOCI2法(Method of Loci)
  • マインドパレス(Mind Palace)
  • メモリーパレス(Memory Palace)
  • 座の方法(ローマンルーム・メソッド)
  • ジャーニー法(Memory Journey)

とも呼ばれます。呼び方が異なるだけで、同一の方法論を指していると考えてもらって問題ありません。

「場所」にイメージを置き、鮮明な記憶を「思い出す」

シモニデスは、「鮮明な記憶は"順序"によってもたらされる」と考えました。

つまり、記憶力を鍛えたい場合は、

  1. どこか具体的にイメージできる「場所」を選ぶ
  2. 記憶したいものの「イメージ」をその場所に順番に置く
  3. 「場所の順番」を辿って「物の順番(記憶)」を思い出す

という方法を取ればいい、ということです。

「"場所"をノート代わりに、"物のイメージ"を文字代わりに」

以上が、「記憶の宮殿」と呼ばれる暗記テクニックのすべてなのです。

「記憶の宮殿」は誰でもできる記憶法

脳の記憶容量は"ほぼ"無限大

米国ソーク研究所のテリー・セチノウスキー教授らの研究によると、人間の脳が記憶できる容量は約1ペタバイト(1,024テラバイト)3とのことです。

これは、HD(高精細)品質の映像「13.3年分」に相当する容量です。つまり、個人差はあれど、脳の記憶容量は無限に等しいといっても過言ではないわけですね。

「無意識下」での情報処理量は「意識下」の約55万倍

ハイデルベルク大学生理学研究所のマンフレート・ツィメルマン教授の研究によれば、人間の脳は毎秒1,100万ビットもの情報を「無意識」に受け取っている4そうです。

対して、「意識」して受け取っている情報は——研究内容によって異なるものの——毎秒20ビットほど。無意識下で受け取っている情報量は、意識して受け取っている情報の55万倍にも及ぶわけですね。

イメージと場所によって記憶を結びつける「記憶の宮殿」も、ある意味では「潜在意識に意識的に記憶を貯蔵する方法」と言い換えてもいいかもしれません。

あらかじめ自分で作ったルートを順番通りに辿ることで、そのときに置いた記憶(イメージ)を半自動的に引き出すことができるわけですからね。

そういった点から見れば、「記憶の宮殿」は何も天才にのみ与えられた特殊な能力のようなものではなく、誰でもできる記憶法だといってもいいのではないでしょうか。

【3ステップ】天才の暗記術「記憶の宮殿」の作り方

「記憶の宮殿」の作り方は、大きく3ステップに分けて考えることができます。

  1. 場所」の設定
  2. トリガー」の設定
  3. トリガーに「イメージ」を置く

今回は例として、

  1. 「納豆」
  2. 「アインシュタイン」
  3. 「チュパカブラ5
  4. 「モアイ像」
  5. 「パスタ」

という、なんら関連性のない「5つのものの順番」を覚えたいとします。

記憶を保管する「場所」を選ぶ

まずは、記憶を保管する「場所」を用意します。

記憶を回収する際、この場所を頭の中で歩きながら行うので、できるだけ具体的にイメージできる場所を選ぶといいでしょう。実家や学校、職場など、自分にとって身近な場所を設定しておくとイメージしやすいです。

おそらく、多くの方にとって一番身近な「場所」は自分の家だと思うので、今回は「自分の家」を例に「記憶の宮殿」を構築していきます。

イメージの置き場所である「トリガー」を決める

覚えたいものを置いていく「トリガー」を決めていきます。

便宜上「トリガー」と呼んでいますが、要は「記憶を置いておく場所」のことなので、好きに呼んでもらって大丈夫です。

今回は「5つのものの順番」を覚えられればいいので、「自分の家」から記憶の置き場所となる「トリガー」を5つ選びます。

  1. 玄関
  2. テーブル
  3. 冷蔵庫
  4. テレビ
  5. ソファー

ここでは例として上記の5つを挙げてみましたが、設定する「トリガー」の対象は、家にあるものであればなんでもいいです。

ただし、あくまで「トリガーを順番通りに歩ける」ということが重要なので、なるべく家の中を一筆書きで辿れるように「トリガー」を置いてください。

設定した「トリガー」を、頭の中で順番通りに歩けるようになったら準備完了です。

「トリガー」に覚えたい物の「イメージ」を置いていく

今回覚えたい物は、

  1. 「納豆」
  2. 「アインシュタイン」
  3. 「チュパカブラ」
  4. 「モアイ像」
  5. 「パスタ」

の5つでした。これらを、それぞれ自分が設定した「トリガー」に置いていきます。

  1. 納豆→玄関
  2. アインシュタイン→テーブル
  3. チュパカブラ→冷蔵庫
  4. モアイ像→テレビ
  5. パスタ→ソファー

イメージを置くときのコツ

イメージを「トリガー」に置いていく際、どんな風に置いても自由です。

たとえば、納豆を玄関に置くのであれば、以下のようなイメージが効果的です。

  • 玄関が納豆臭いイメージ
  • 玄関に大量の納豆がバラ撒かれているイメージ
  • 靴箱に納豆がパンパンに詰まっているイメージ

「トリガー」に「イメージ」を置くときに重要なのは、できるだけ下品で、卑猥で、ユーモラスで、インパクトのあるシチュエーションを想像することです。

現実にはあり得ないような——大げさでおもしろいものであればあるほど、イメージが強烈に脳へと刷り込まれます。

同じように、他の「トリガー」にも「イメージ」を置いていきましょう。

  1. 「玄関」がやけに「納豆」臭い。足元が納豆だらけだ。(→リビングへ)
  2. 「テーブル」には「アインシュタイン」が描かれたクロスが敷かれている。(→冷蔵庫へ)
  3. 「冷蔵庫」を開けると、なぜか「チュパカブラ」が涼んでいた。噛まれたら嫌だなあ。(→テレビをつける)
  4. 「テレビ」を点けると、「"モアイ像"が空から降ってきた」というニュースで持ちきりだった。世紀末である。(→ソファに座る)
  5. 「ソファ」に座ると、ふと尻に違和感を感じた。目をやると、そのソファは「パスタ」でできていた。ペロッ……これはアルデンテ!!

このように、イメージをトリガーに置き、具体的なシチュエーションを想像することで、圧倒的な記憶力を手に入れることができるのです。

「記憶の宮殿」を作る上での3つのコツ

定期的に宮殿を訪れて「記憶の確認」をする必要はありますが、基本的に、一度「記憶の宮殿」を構築してしまえば、あとはいつでも宮殿を訪れるだけで記憶が引っ張り出せます。

「記憶の宮殿」を作る上でのコツは、以下の通りです。

  1. ジャンル・分野ごとに「場所(記憶の宮殿)」を分ける
  2. 一部屋ずつの「トリガー」をなるべく減らし、部屋の数で「トリガー」を増やす
  3. 「イメージ」を「トリガー」に置いている途中で復習(最初から思い出したり)しない

細かいポイントはたくさんありますが、今回は以上の3つのみに絞って見ていきましょう。

①ジャンル・分野ごとに「場所(記憶の宮殿)」を分ける

目的ごと——ジャンルや分野ごとに「記憶の宮殿」の「場所」は分けたほうがいいでしょう。

たとえば、「自分の家」の中に「元素記号」と「徳川将軍系図」、さらには「山手線路線図」の記憶が混在していると、思い出すときに頭が混乱してしまいます。

それこそ自分の家が宮殿並みに広ければ別ですが、「覚える物の数」と「場所に置くことができるトリガーの数」が釣り合っていない場合は、「場所」を別に用意しましょう。

「元素記号」を「自分の家」に置いているならば、「徳川将軍系図」は「地元の銀行」に、「山手線路線図」は「最寄りの駅構内」に、といった具合です。

「場所」を設定して「トリガー」を設置する、という「記憶の宮殿の構築」もそれなりに大変なので、「そもそも、これは果たして本当に覚えるべきことなのか?」と考えることも大事ですね。

部屋の数で「トリガー」を増やすようにする

できるだけ一箇所の部屋に置く「トリガー」は少なくし、部屋の数で「トリガー」を稼いだほうが混乱が少なくて済みます。

一箇所にいくつもトリガーを置いてしまうと、イメージが複雑になりがちですし、順番もごちゃごちゃになっちゃいますからね。

「記憶の宮殿」の中では、できるだけ「長い距離」を歩くようにしたほうが、記憶を思い出す効率がいいです。別に家賃もかかりませんので。

途中で復習(最初から思い出したり)しない

「トリガー」に「イメージ」を配置していく際、置いたイメージを最初から思い出したり、復習したりしないように注意が必要です。

覚える物が5個とか、10個とかなら最後まですっとイメージを置ききれると思いますが、覚える対象が30個とか、50個とかになってくると大変ですよね。

「最初のほうに置いたイメージ忘れてないかな? ちょっと復習しておこうかな?」と、だんだん不安になってきます。

でも、ここはぐっと我慢し、50個と決めたら50個のイメージを置き終えるまで復習はしないようにしたほうがいいです。感覚としては、「薄い絵の具を何度も塗り重ねて色を濃くしていく」というイメージでしょうか。

とりあえず最後まで置いてみて、あとは何度もその工程を繰り返していく——。そうしてだんだん「記憶の宮殿」の完成度を高めていくほうが効率がいいでしょう。

「記憶の宮殿」の場所が足りないときは?

「記憶の宮殿」の広さが足りなくなった場合は、自由に拡張、改築をしていって大丈夫です。

頭の中では自由に空間をカスタマイズできるので、「自分の家のトイレ」を「自分が通っていた中学校」とつなげておくことも可能です。

できる限り鮮明に思い出せる、通い慣れた場所、もしくはコースを選ぶとよいでしょう。

ゲームの世界を「宮殿」にしてもいい

僕はホラーゲームが好きなので、宮殿の候補地として、以下のようなゲームから場所を設定しています。

  • バイオハザードシリーズ
  • サイコブレイクシリーズ
  • サイレントヒルシリーズ

ゲームであれば、街の中や建物を「記憶の宮殿」として設定できますし、遊びながら、視覚的に場所を歩き回ることができます。

何度もやりこんだようなゲームであれば、もはや実際にプレイする必要もなく「記憶の宮殿」として使えるでしょう。

3D視点のゲームは、小物や標識、食べ物にいたるまで、とても細かく作られています。その分、「トリガー」を多く用意できるので、「記憶の宮殿」にはぴったりです。

ちなみに、「軽い恐怖」は記憶力を強化する6という研究結果もあるように、「記憶の宮殿」と「ホラーゲーム」はとても相性がよいのです。

「記憶の宮殿」を実践する天才たち

ハンニバル・レクター

ハンニバル・レクターは、作家トマス・ハリスの「羊たちの沈黙」や「ハンニバル」などの作品に登場するキャラクター。

精神科医であり猟奇殺人犯であるハンニバルは、専門の精神医療に関する知識のほか、高等数学、理論物理学、古文書学、美術、古今東西の歴史にも詳しい。

非常に高度な知能を有しており、イタリア人が違和感を抱かないほど自然なイタリア語を操ることができる(6歳までに英語、ドイツ語、リトアニア語の3ヶ国語を習得)。

頭の中に1,000の部屋がある広大な宮殿を構築していて、たとえ体を拘束されていても、いつでも自由に宮殿内を歩き回ることが可能。

ハンニバル・レクターが登場する作品「羊たちの沈黙」「ハンニバル」「レッド・ドラゴン」「ハンニバル・ライジング」は、 U-NEXT ですべて視聴が可能です。今なら31日間無料トライアル中なので、ぜひチェックしてみてくださいね。

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シャーロック・ホームズ

イギリスのBBC制作のテレビドラマ「SHERLOCK/シャーロック」に登場するシャーロック・ホームズは、自称「高機能社会不適合者」の探偵。

「マインド・パレス(精神の宮殿)」を駆使しており、各地の地理や地質、天気、細菌、暦などに関して膨大な知識を記憶している。

パトリック・ジェーン

アメリカのCBSの制作のテレビドラマ「THE MENTALIST/メンタリスト」の主人公パトリック・ジェーンは、CBIの犯罪捜査に加わり、事件の解決に協力している犯罪コンサルタント。

観察力、記憶力(「記憶の神殿」と呼ばれる記憶術を用いている)に優れており、催眠術も会得している。しかし、元詐欺師で、以前は自身を霊能者サイキックと偽って活動していた。

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全米記憶選手権のチャンピオンも使っている

「なんだよ、ハンニバルも、シャーロックも架空のキャラクターじゃねえか」と思われてしまいそうですが、現実の世界でも「記憶の宮殿」を使っている人はいます。

世界記憶力選手権(World Memory Championships)で8回の優勝経験があるドミニク・オブライエンは、このテクニックを「旅のメソッド(記憶の宮殿)」と名付け、トランプ52枚を45秒で記憶することに成功しました。

ちなみに、2021年12月時点での52枚のトランプを記憶する「スピードカード」の世界記録は、モンゴルのShijir-Erdene Bat-Enkh選手が叩き出した「12.74秒4」です。

52枚で12.74秒なので、1秒あたり4枚以上のトランプを記憶していることになります。すごすぎる。

まとめ

まだ僕も「記憶の宮殿」の存在を改めて認知したばかりで、宮殿自体もぜんぜん構築できてませんが、トランプ52枚を覚えるぐらいだったら数時間でできました(ただし覚えるまで5~10分はかかる)。

記憶力アップのためにサプリメントを摂取するというのも有効な手段かもしれません。一般的には、記憶力維持のためには「イチョウ葉」がいいとされています。

あとは、なんと言っても「睡眠」が大切ですね。良質な睡眠なくして、記憶力の強化は考えられません。

via:羊たちの沈黙 (新潮文庫) , 弁論家について〈上〉 (岩波文庫) , ユーザーイリュージョン―意識という幻想, Joshua Foer: Feats of memory anyone can do | TED Talk / Mnemonic Training Reshapes Brain Networks to Support Superior Memory

  1. Speed Cards World Record 12.74 seconds, Shijir-Erdene Bat-Enkh