頭がごちゃごちゃしている状態というのは、いわば「食べ過ぎ」のようなもの。
胃袋の許容範囲を超えて物を食べると、当然、気持ち悪くなりますし、お腹だって痛くなりますよね。
そういう"よくない状態"が、脳における「ごちゃごちゃした状態」だと言えます。脳に入ってくる情報量が、脳の処理範囲を超えてしまっている状態です。
ただ、厄介なのが、脳は「食べ過ぎによる腹痛」とちがって、痛みを感じにくいのです。感じたとしても、心の痛みであることが多い。
そのせいか、いざ「頭が——もやもや——ごちゃごちゃする」という場面になったとしても、大して気にも留められずに片付けられてしまうんですね。
こうなると、脳と心がどんどん圧迫されて、健康な状態では気にならないようなどうでもいい問題でさえ、深刻な問題に思えてくるものです。
小さなもやもやが、新たなもやもやを誘発し、やがて脳は悪循環に陥ってしまう——これがいわゆる「ごちゃごちゃ」の正体と言えるでしょう。
今回はこの「頭がごちゃごちゃする状態」をたった3ステップで解消してやろう、という記事構成になってます。
ごちゃごちゃの原因がおおよそわかっているか?
頭がごちゃごちゃしている状態と言っても、「原因がわからない場合」と「原因がわかっている場合」の2つがあります。
俗に言う、「何がわからないのかわからない状態」なのか、それとも、「頭がごちゃごちゃしている原因はアレだな」と自分で何となくでもわかっているのか——。
どちらも基本的にこれから行う作業自体に変わりはありませんが、ここは大事なポイントです。ぼんやりとでいいので、少し考える時間をとってみましょう。
自分はいま、悩んでいるのか、それとも考えているのか?
頭がごちゃごちゃしているとき、「悩む」と「考える」の2つのちがいを感じてみると一気に楽になることがあります。
『イシューからはじめよ』(安宅和人, 英治出版)では、「悩む」と「考える」を以下のように捉えています。
- 「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに、「考えるフリ」をすること
- 「考える」=「答えが出る」という前提のもとに、建設的に考えを組み立てること
ごちゃごちゃの原因がわかっているか、わかっていないかはともかく、「自分はいま、悩んでいるのか、それとも考えているのか?」というアプローチは有効な手段です。
課題の分離をする
ごちゃごちゃの原因におおよそ検討がついている場合、一度「それ、またはそれらは"自分の行動"で変えることができるか?」を考えてみるといいです。
「アドラー心理学」で言うところの、「課題の分離」にあたるところですかね。
課題の分離とは、
- 自分と他者の「課題を分離」すること
- 「他者の課題」には踏み込まないようにすること
- 他者にも「自分の課題」に踏み込ませないようにすること
です。できるだけ客観的にごちゃごちゃの原因となっているものを探ってみましょう。
もし自分に解決不可能な課題だとしたら、いくら考えても仕方がありませんし、それが自分の課題なのだとしたら、そこに他者の課題を混ぜてはいけないのです。
アドラー心理学に興味がある人、または対人関係の悩みがある人は、ぜひ『嫌われる勇気』(岸見 一郎 / 古賀 史健, ダイヤモンド社)を読んでみてください。きっと気持ちが楽になるはずです。
頭のごちゃごちゃを解消する3ステップ
ごちゃごちゃ解消3ステップ
- 情報を遮断する
- 情報を吐き出す
- 時間をおく(=忘れる)
情報を遮断する
腹痛のときにドカ食いする人はいないとは思いますが、頭のごちゃごちゃにも同じことが言えます。
要は、情報の過剰摂取で消化不良を起こしている状態なので、それ以上余計な情報を頭に入れないことが肝要です。
具体的に言うと、スマホの使用は最小限に抑える、テレビは極力観ない、といったところでしょうか。
頭がごちゃごちゃしている状態は控えめに言っても気持ちのいいものではないので、意識を他のところへ移したくなる気持ちも分かります。
——が、スマホやテレビは脳への刺激が強く、視覚や聴覚から入ってくる情報量も圧倒的に多いのでおすすめしません。
頭のごちゃごちゃ解消のために短期決戦で臨むのであれば、いっそ「あらゆる情報はシャットダウンする」と決意してしまったほうがいいでしょう。
ついスマホに手が伸びてしまうなら
数ある情報媒体の中でも、スマホの依存性はとても高く、場合によっては自分の意思で遠ざけることは難しいかもしれません。
どうしてもスマホに手が伸びてしまう場合は、以下の対処法をするだけでもだいぶ情報を遮断することができます。
スマホ対処法
- 通知はオフにする
- グレースケールにする
通知をオフにすると不安を感じる方もいるとは思いますが、メールやLINE、SNSのチェックは、あらかじめ時間を決めておいたほうが無難です。
スマホをグレースケールに
また、スマホのカラー設定をグレースケールにしておくと、一気に情報量が減って少しだけ頭が楽になります。
Androidの場合
9.0以降、全機種にモノクロモードが搭載されています。以下のいずれかの方法で設定が可能です。
- ユーザー補助→色反転
- ユーザー補助→視覚→グレースケール
- 開発者向けオプション→色空間シミュレート→全色盲
- 開発者向けオプション→カラースペースをシミュレート→全色覚異常
iOSの場合
iOSの場合、以下のいずれかの方法で設定が可能です。
- 設定→一般→アクセシビリティ→ディスプレイ調整→カラーフィルター→グレースケール
- 設定→アクセシビリティ→画面表示とテキストサイズ→カラーフィルタ→グレイスケール
ただ、これは最終手段であって、できれば頭がごちゃごちゃしているときぐらいは、スマホから離れることをおすすめします。
すでに危険な状態かも?スマホ依存性に潜む7つの危険性まとめ
情報を吐き出す
情報がこれ以上入ってこないように流れをせき止められたら、次はすでに飽和状態にある情報を吐き出す作業に移ります。
つまり、思考を文章化して、可視化するということです。思っていること、感じていること、それらを一気に吐き出す。
これは誰かに話すでもいいし、もしそれが迷惑になりそうであれば、紙に書くでもいいです。
頭がごちゃごちゃしているときは、そらでものを考えすぎている証拠なので、いったん地に置いてやると楽になります。
できればあとで読み返してもきちんと意味のわかる文章になっているのが理想ですが、単語をいくつか書き留めるだけでも効果アリです。
吐き出している最中は一切評価しないこと
情報を吐き出す際に肝心なのは、いちいち自分が書いた言葉なり、文章なりに対して評価しないことです。
こんな考えはダメだとか、これだから自分は悩んでしまうんだとか、そういう気持ちがふつふつと沸き上がってきても一切無視すること。
出せる分だけ、出してみるのです。ある程度スッキリするまで、これは続ける。これ以上もう出ないと思っても、そこから10分だけがんばってみる。
だいたい、30分〜1時間ぐらい必死に吐き出すと、もう頭の中はすっからかんになっているはずです。でも、まだ安心しない。
時間をおく(=忘れる)
ここまで、情報がこれ以上入ってこないようにシャットアウトする、それから頭の中にある情報を吐き出すという2つのステップを踏んできました。
もしかしたら、吐き出すことが難しいと感じた人、まったく吐き出せなかった人、いると思います。でも、それで大丈夫です。
幸いなことに、人間の脳には、人類史上でもっとも価値があり、もっとも画期的な機能がひとつあります。
それは、忘れること——忘却です。
記憶の忘却、すなわち思考の整理は、たいへん便利なことに無意識下でも機能します。むしろ、無意識下のほうがよく働くのです。
忘れようと思っても忘れられないから困る
ただ、忘れようと思って特定の記憶を忘れられるほど、人間の脳は"欠陥品"ではありません。
人間には自己治癒能力が備わっています。風邪でも、怪我でも、二日酔いでも、軽いものなら時間の経過とともに回復します。
情報においても、自然の流れに任せるのが一番いい。ステップ2で書いたことは、いったん忘れてしまう。忘れてもいいものだ、と自分に許可を出す。
それから、あとは放っておくだけでいいです。あとは脳が勝手にいるもの、いらないものを分けてくれます。それまではじっと我慢——我慢というよりかは、無視に近いです。
「あ、わかったぞ」というタイミングが来るまで、自然に任せましょう。脳がやりたいように、やらせておけばいいのです。
散歩と睡眠
中国の欧陽修という人は、すぐれた考えが浮かぶ3つの場所として、「馬上」「枕上」「厠上」を挙げました。
馬上——現代なら電車とか、車ですかね。枕上はそのまま、枕の上、厠上は厠——つまり、トイレです。
こういったふとした場所、ぼんやりというか、ぼーっとというか、体や心の底からリラックスした瞬間に、解決策が浮かぶことは珍しくありません。
脳は眠っている間に記憶や思考の整理をして、情報の取捨選択や忘却をしてくれますし、それは起きている最中でも行われています。
きちんと寝ること、そして体を動かすこと、心配事は吐き出して、忘れる。そういう自然な生活を送ってさえいれば、脳は勝手に答えを出してくれます。
——否、答えはきっと自分の中に最初からあるはずなのに、次から次へと入ってくる余計な情報で見えなくなってしまっているだけかもしれませんね。
まとめ
ごちゃごちゃ解消3ステップ
- 情報を遮断する
- 情報を吐き出す
- 時間をおく(=忘れる)
ごちゃごちゃの解消はつまり、思考の整理です。または、アイデアの作り方とも言えます。
2018年に東大・京大で1番読まれた本1である『思考の整理学』は、1986年第1刷という古い本ではありますが、そういった意味でもとても参考になる良書です。
思考の整理という技術でなく、これから必要な「学びに対する姿勢」というものも合わせて学べる内容になっているので、ぜひ手にとってみてくださいね。