ニュージャージー大学の研究や他の最新の研究によると、先延ばしの原因は、自制心や意志力ではなく、ネガティブな感情であることが確認されています。
具体的には、前日に感じたネガティブな感情が処理されないまま翌日に持ち越されると、その日に先延ばしをする傾向が強まるという結果*(Psychology Today)が示されているとのこと。
逆に、前日にポジティブな感情を持っていたとしても、それが翌日の先延ばし行動に大きな影響を与えないことも分かっています。
つまり、ネガティブな感情を上手に処理することさえできれば、次の日に先延ばしをしてしまう確率を減らせるということ。
この研究からも分かるように、先延ばしを防ぐためには、意志力や時間管理よりも、感情の処理に焦点を置いたほうが良いみたいです。
「ディフュージョン」で感情とストーリーを切り離す
思考は、あくまで頭の中で勝手に作られているストーリーに過ぎず、現実とは関係があるかどうかも定かでない、単なる言葉、音の羅列、繋がりでしかない──。
これが、第3世代の認知行動療法「ACT(アクセプタンスコミットメントセラピー)」の概念です。
思考の内容と距離を置き、思考と行動の自動的な結びつきを弱めること──ディフュージョン──によって、思考との関係性を変えることを目指します。
ディフュージョンはネガティブな感情の処理を直接的な目的にしているというよりかは、思考や感情に対する新しい関係性を築き、価値に基づいた行動を可能にする方法だということです。
感情とストーリーを切り離すテクニック
言い方を変える
- 変声で言う
- 替え歌にする
- ものすごく「ゆっくり」言う
- キャラクターの口癖やフレーズを真似て言う
- 邪魔をしている考えや言葉を「早口言葉」のように早く、繰り返し言う
このように、頭の中の否定的な考えをユーモアを交えて言うことで考えの重みを軽減することができます。
特に、すぐにできて効果が高いと思うのは、変声やキャラクターの真似でしょうか。
ミッキー◯ウス『ハハッ! やあ、みんな。僕は何をやっても上手くいかないクズ人間なんだ! よろしくね!』
実際に声に出さずとも、頭の中で行うだけでも感情と距離を取ることができるので、ネガティブな感情に飲み込まれる危険性が減ります。
自分の考えに「~という考え」を付け加える
自分の考えに「〜という考え」を付け加えることで、感情から距離を取るテクニックもあります。
例えば、『私は失敗するかもしれない』と思っていたとしたら、『私は失敗するかもしれない──という考え』と意識することで、その考えが現実そのものではないことを理解できます。
物語にタイトルを付ける
自分の感情やストーリーにタイトルを付けて、俯瞰的に見ることで感情との距離を作ります。
例えば、「私はどうせ失敗する」というタイトルがあったとしたら、以下のようなタイトルを付けてみたり──。
- 諦めのモノローグ
- 失敗預言者の独り言
- 悲観主義者の自信ゼロ宣言
- ネガティブ思考が多すぎる
その他の方法
感情とストーリーを切り離すテクニックは、上記の他にも、
- その考えや感情が現実的に「役に立つか」を問い、無駄な思考に気付くことで感情を整理する方法
- 自分の感情を「不真面目な」視点で見直すことで、ストレスやプレッシャーを和らげる方法
などがあります。自分に合った方法を選ぶと良いと思います。
マインドフルネス瞑想
また、マインドフルネス瞑想も、ネガティブな感情に対処する強力な方法とされています。
瞑想を通じ、自分の感情を評価せず、そのまま受け入れることで感情のインパクトを弱め、先延ばしを防ぐ効果が期待できます*(Psychology Today)。
瞑想と言っても難しく考えすぎず、ただ「呼吸に集中する」だけで良いです。
目を閉じるか、一点を見つけて呼吸に注意を向ける。たったそれだけ。場所も選ばないし、人目も気にしなくていい。
マインドフルネス瞑想と聞くと、どこかスピリチュアルな雰囲気や変なビジネス臭がする人もいると思いますが、単に「呼吸に集中することを格好良く言ってるだけ」です。
吸って、吐く。呼吸に意識を向ける。何秒吸って、何秒吐く──といったことも気にしなくて良いのです。
重要なのは、人間は呼吸に意識を向けるだけで気持ちが落ち着く生き物であるということだけ。
マインドフルネスは瞑想だけに限らず、日常生活の中でも実践することができます。
ストレス低減や心身の健康増進を図る方法など、日常のあらゆる場面でマインドフルネスを実践する方法が知りたいという方はこちらの本がおすすめ。