自律訓練法を実践し始めてからすでに10年以上が経過しました。
現在僕はうつ病から来る不眠の症状と闘っていますが、就寝前に自律訓練法を実践することで睡眠導入剤の減量に成功しています。
自律訓練法が目指すのは肉体的緊張をほどくことなので、精神面だけでなく、肩こりや冷え性の解消などの健康効果にも期待できそうですね。
自律訓練法とは?
自律訓練法とは、1932年にドイツの精神医学者シュルツ(Schultz, J. H.)によって体系化されたものであり、心身のリラックスを目的とした一種の自己催眠法です。
身体の筋肉や血管をゆったりとさせることで心のリラックスを促し、心身のバランスを回復させることが目的になります。
自律訓練法は心と身体が密接に関係していることを応用しており、自律神経を整えるもっとも基本的な治療法として精神科や心療内科で導入されています。
不安や緊張を感じているときには身体が硬直しますよね。身体の硬直が心を緊張させるという関係があるため、反対に身体の緊張をほぐすことで心の安定をはかるというわけです。
また、不眠や食欲不振、便秘、下痢など、身体に現れるさまざまな症状は自律神経系の働きが悪くなったために起こります。
身体の不調を解消するためにも自律訓練法は有効なのです。
自律訓練法と瞑想の違い
自律訓練法は瞑想の一種として考えられる場合も多いですが、大きく異なる点はその「目的」と「アプローチの方法」です。
瞑想の目的が「心の調整や訓練」であるのに対し、自律訓練法の目的はあくまでも「肉体的な緊張を和らげる」ことにあります。
自律訓練法には精神的なリラックス効果もありますが、アプローチの出発点が「肉体」から始まるんですね。
自律訓練法の効果
効果には個人差はあるものの、精神や身体活動が安定するというメリットがあります。
自律訓練法の効果
- 疲労回復
- 向上心の増加
- 穏やかな気持ちになる
- 仕事や勉強の能率向上
- 身体的な痛みや精神的な苦痛の緩和
- 自己統制力の増加による衝動的行動の減少
心身のリラックス効果
- 筋肉の弛緩、血管の拡張
- 鎮静、安静、ストレス解消
自律訓練法を行うことで肩が軽くなり、呼吸も楽になります。
不眠への効果(睡眠導入薬の減量)
自律訓練法は精神的なリラックス効果もあるため、不眠症状の改善や睡眠の質を向上させる目的にも有効です。
また、自律訓練法が睡眠導入剤の減量に効果的だとされる文献1もありました。
上記の文献によると、自律訓練法は入眠困難や精神的安定、早朝覚醒、熟眠感の欠如、日中の眠気、睡眠時無呼吸症候群、中途覚醒、睡眠剤の減量に効果があったとされています。
禁忌
自律訓練法を行っても意味がないとされる禁忌症、非適応症は以下の通りです。
- 治療意欲がない
- 5歳以下の子ども
- 知的能力がかなり劣っている患者
- 急性精神病や統合失調症的反応の激しいとき
- 自律訓練法の練習中の徴候や練習そのものを十分に監視できないとき
自律訓練法の危険性
以下のいずれかに当てはまる方は、一部のステップで副作用が起きる危険性があります。
- 糖尿病である
- 心臓に異常がある
- 頭痛の持病がある
- 脳波に異常がある
- 妄想の出る精神疾患がある人(もともとの精神症状が悪化する場合がある)
※なんらかの病気や障害などで医療機関にかかっている場合は、自律訓練法を実践する前に必ず主治医に相談してください。医療機関にかかっていない場合でも、上記のような持病がないことを確認してから自律訓練法に取り組むことをおすすめします。
自律訓練法のやり方
- 目は軽く閉じる
- 手は膝の上に置く
- トイレは済ませておく
- 時計や眼鏡、ベルトなどは外しておく
- 髪を後ろで束ねている場合はほどいておく
- 足の角度は90度よりやや広めに(座る場合)
- 照明はやや暗めにし、雑音の少ない落ち着ける場所をつくる
体勢はあおむけで寝るか、座って行います。
自律訓練法の公式
自律訓練法には「言語公式」があり、公式を心の中で唱えていくという方法をとります。公式を頭の中でイメージし、2~3回ほど心の中で繰り返します。
- 背景公式「気持ちが落ち着いている」:安静感
- 第一公式「両手両足が重たい」:重量感
- 第二公式「両手両足が暖かい」:温感
- 第三公式「心臓が規則正しく打っている」:心臓調整
- 第四公式「楽に息をしている」:呼吸調整
- 第五公式「お腹が温かい」:腹部温感
- 第六公式「額が心地よく涼しい」:頭部調整
公式を習得するまでには時間がかかるので、気長にやっていきましょう。
個人差はあるかと思いますが、完璧にマスターするまで4ヶ月~1年以上は見ておいたほうがいいかもしれません。
【注意点】練習後は消去動作を!
自律訓練法の練習後には必ず「消去動作」を行います。
- 肩や首を大きく回す
- 両手を強く握ったり、開いたりする
- 両手を上げながら背筋を伸ばし、伸び切ったらすとんと両手と肩を落とす
消去動作は意識や筋肉の状態を通常レベルに戻し、自己催眠状態から醒めるために必要な動作です。
Q.そのまま寝るのは問題ない?
入眠前に自律訓練法を行う場合は、消去動作はせずにそのまま眠っても問題ありません。
自律訓練法のコツ
自律訓練法の練習時には、周りの刺激などに惑わされず、ゆったりとした気持ちで自然に言語公式が頭に浮かぶのを待ちます。
コツは受動的注意集中です。受動的注意集中とは、自然に注意が向いているリラックスした状態のこと──つまり、リラックスしながら集中している状態です。
ぼおっとしているわけではなく、意識的に集中しているわけでもない。リラックスしていながらも集中している──。
受動的注意集中ができるようになるために自律訓練法を練習している、といっても過言ではありません。
焦った気持ちや落ち着きのない気持ちは禁物です。よって、空腹時は避け、トイレは済ませておくのがいいでしょう。慣れてくると、仕事の合間や通勤途中の電車の中でもできるようになります。
公式はすべて行う必要はなく、第二公式までやって、それが感じられるようになってきたら次のステップに進むといった形でも大丈夫です。第二公式まででも十分リラックスや緊張をほぐすことは可能ですので。
また、心臓の悪い方は第三公式を、胃腸の悪い方は第五公式の実施は避けたほうがいいでしょう。
独学でも習得は可能ですが、自律訓練法をより安全に進めていきたい方は専門の指導士や指導医に相談してみましょう。日本自律訓練学会のサイトでは、自律訓練法専門の指導士や指導医のリストを参照できます。
自律訓練法を学べる本やアプリはある?
自律訓練法に関する書籍は、入門から専門書までさまざまなものがあります。自律訓練法有資格者や医療関係者、自律訓練法学会での実績がある方の書かれたものから探すといいでしょう。
音声ガイドCD・DVDや動画、スマホアプリもありますが、正しい効果を得るためにも専門家の携わったものを選ぶといいと思われます。
まとめ
自律訓練法を身につけることで、いつでもどこでも自分をリラックス状態へ持っていくことが可能になります。
受動的注意集中をさらに訓練すると、学習や速読、さらにはイメージ力アップなどにも活用できるそうです。ぜひ今日から試してみてくださいね。
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via:自律訓練法の健康効果とは | 健康長寿ネット, 九州大学-研究者情報 [富岡 光直 (助教) 医学研究院 臨床医学部門], 自律訓練法有資格者一覧 - 日本自律訓練学会