現代社会では、日々新しい情報が溢れています。その中で、効率よく情報を整理し、理解し、記憶に定着させることが求められます。特に学生やビジネスパーソンにとって、限られた時間内で重要な情報を吸収し、それを適切に活用する力が必要不可欠。そこで今回紹介するのが、効率的に非フィクションのテキストを読み解くための強力なツール「THIEVES読書法」です。
THIEVES読書法とは?
THIEVES(シーヴズ、またはティーヴズ)読書法は、テキストを読む前にその要点を「盗む」ようにして把握することを目的とした読書法です。特に、非フィクションや学術的な文書を読む際に有効であり、学習効率を飛躍的に向上させるための7つのステップで構成されています。「THIEVES」は以下の要素の頭文字を取ったものです。
- T: Title(タイトル)
- H: Headings(見出し)
- I: Introduction(はじめに)
- E: Every first sentence(段落の最初の一文)
- V: Visuals and vocabulary(ビジュアルと語彙)
- E: End-of-chapter questions(章末問題)
- S: Summary(まとめ)
これらのステップを順番に実践することで、テキストの全体像を把握し、理解を深めることが可能です。では、各ステップを詳しく見ていきましょう。
1. タイトル(Title)
最初のステップは、テキストの「タイトル」を確認することです。タイトルは、著者が最も伝えたいテーマを表していることが多く、その内容についての予測を立てるための出発点になります。例えば、タイトルに「効率的な学習法」と書かれていれば、どのような手法が提示されるのか、既に知っていることや予測できることをメモしておくと良いでしょう。
このように、タイトルを分析することで、テキストの目的を把握し、何を学ぶべきかを明確にすることができます。
2. 見出し(Headings)
次に、各章の「見出し」を確認します。見出しは、テキストの構造を視覚的に理解するための重要な手がかりです。各章でどのような情報が提示されるかを予測し、それぞれの見出しがどのような内容をカバーしているのかを考えます。見出しは、大きなテーマを小さな要素に分割する役割を持っており、その分割の理由を自問することで、テキストの全体像をさらに深く理解することができます。
3. はじめに(Introduction)
章の「はじめに」部分は、その章のテーマや目的を端的に示しています。この導入部分を読むことで、著者がその章で何を伝えたいのかを理解しやすくなります。読書を始める前に、この部分をしっかりと確認し、全体的なテーマに対する理解を深めることが大切。また、導入部では、興味を引くポイントをメモしておくと、後で内容を振り返る際に役立ちます。
4. 段落の最初の一文(Every first sentence)
テキスト全体を詳細に読む前に、各段落の「最初の一文」をチェックすることで、その段落の主題を迅速に理解することができます。段落の最初の一文は、その段落の要点を簡潔に示している場合が多く、全体像を掴むためのショートカットとして機能します。すべての段落を読む前に、まずこの作業を行うことで、効率的にテキストの概要を把握できます。
5. ビジュアルと語彙(Visuals and vocabulary)
テキスト内にある「ビジュアル」(図表、グラフ、写真など)や重要な「語彙」を確認します。これらの視覚的要素やキーワードは、テキストの内容をより理解しやすくするだけでなく、重要な情報を強調する役割を持っています。ビジュアル要素は特に、複雑なデータや概念を視覚的に整理するために有効です。これを見逃さずに分析し、メモすることで、テキストの理解が一層深まります。
6. 章末問題(End-of-chapter questions)
章の最後に「章末問題」がある場合、これを確認することで、テキストの重要なポイントを復習し、理解度を確かめることができます。章末問題は、著者が特に強調したいポイントを整理し、読者に自ら考えさせる目的で設けられています。この質問に答えることは、自分の理解を確認する有効な方法となります。
7. まとめ(Summary)
最後のステップは「まとめ」を作成することです。各章の内容を要約することで、主要なテーマや概念を整理し、記憶に定着させることができます。要約は、学習を定着させるために非常に有効な手段であり、後から内容を振り返る際にも役立ちます。要点を簡潔にまとめ、自分なりの言葉で再構築することで、テキストに対する理解が深まり、長期的な記憶として保持しやすくなります。
THIEVES読書法の利点とは?
THIEVES読書法を実践することで、以下のような多くの利点を得ることができます。
1. 批判的思考の促進
THIEVES読書法では、単にテキストを読むのではなく、内容を分析し、批判的に考える力を養うことができます。各ステップで自分自身に問いかけ、重要な情報を選別し、理解を深めることが求められるため、自然と批判的思考が促されます。このスキルは、特に学術的な資料やビジネスにおける情報処理において非常に役立つでしょう。
2. 情報の整理と記憶の定着
THIEVES読書法の各ステップで重要な情報を整理し、段階的に把握することで、情報を効率的に記憶に定着させることができます。手書きでメモを取ることも推奨されており、これがさらに記憶を助けます。デジタルなメモに頼らず、自分の手で書くことで、内容がより深く頭に残るのです。
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3. 学習効率の向上
各ステップで必要な情報を先に確認することで、テキストを読む際に学ぶべきポイントが明確になります。その結果、全体の読書時間を短縮しながら、重要な情報にフォーカスすることができ、学習効率が向上します。THIEVES読書法を活用することで、無駄な読み込みを省き、効率的に学びを深めることが可能です。
4. 視覚的情報の効果的な活用
テキスト内のビジュアル要素を積極的に活用することで、視覚的な情報が理解の助けとなります。視覚的に整理されたデータや図表は、文字情報だけでは捉えにくい概念をわかりやすく提示してくれるため、これを分析することで、より深い理解が得られます。
5. 全体像の把握と集中力の向上
THIEVES読書法を用いることで、読む前に全体の概要を把握することができ、その後の読書中に集中力を保ちやすくなります。あらかじめ目的を明確にしておくことで、読書の方向性が定まり、無駄な部分に時間を取られずに、重要な部分に集中できます。
THIEVES読書法の具体的な実践方法
THIEVES読書法を実際に活用するためには、次の手順に従って進めましょう。
- テキストのタイトルを分析する
何を学べるかを考え、そのテーマについての予測を立てる。 - 見出しを確認し、全体像を把握する
見出しごとに、その内容についての質問を作り、理解を深める。 - 導入部分を読む
章の目的やテーマを理解し、その章が何を伝えたいのかを把握する。 - 段落の最初の一文をチェックする
各段落の最初の文を確認し、その段落で重要なポイントを把握する。 - ビジュアルや重要語彙を確認する
テキスト内の図表や語彙をチェックし、それらが示す意味を考える。 - 章末問題を確認する
問題に答えながら、理解した内容を確認する。 - 要約を作成する
学んだ内容を自分なりに整理し、再度確認する。
本は最初から最後まで読まなくていい
THIEVES読書法からも分かる通り、本は必ずしも最初から最後まで読まなくていいのです。確かに、せっかくお金を出して買ったものだから全て読まないともったいない、という気持ちは理解できます。しかし、読書──特に非フィクションの本──の目的は、本を読むことではなく、知識を得ることです。少なくとも一度の読書で全ての内容を理解するのは不可能。本というのは、辞書のように何度も繰り返して使うことで効果を発揮するアイテムなのです。
THIEVES読書法は、学習や情報整理のために非常に有効な手法です。時間を効率的に使いながら、重要な情報を確実に吸収し、記憶に定着させることができます。批判的思考を養い、学習効率を向上させるために、この方法をぜひ取り入れてみてください。特に、非フィクションや学術的な資料を読む際には、この読書法が大きな力を発揮するはずです。