厚生労働省の研究班によって「睡眠障害を事前に防ぐための方法」をまとめた『睡眠障害対処 12の指針』という資料が話題になっています。
今回は、過去に睡眠障害を抱えていた元うつ病患者である僕が、精神科にて睡眠障害のプロフェッショナルから得てきた知識を活かしつつ、その内容を評価していきたいと思います。
『睡眠障害対処 12の指針』
1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
- 睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
- 歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
- 就床前4時間のカフェイン 摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
- 軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング
3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
- 眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする
4. 同じ時刻に毎日起床
- 早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
- 日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
5. 光の利用でよい睡眠
- 目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
- 夜は明るすぎない照明を
6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
- 朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
- 運動習慣は熟睡を促進
7. 昼寝をするなら、15時前の20~30分
- 長い昼寝はかえってぼんやりのもと
- 夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
- 寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る
9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
- 背景に睡眠の病気、専門治療が必要
10. 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
- 長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
- 車の運転に注意
11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
- 睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
- 一定時刻に服用し就床
- アルコールとの併用をしない
引用:睡眠障害対処 12の指針|スイミン資料室|不眠・眠りの情報サイト スイミンネット
*ちなみに、上のページからは12の指針のPDF資料もダウンロードすることができるので、定期的に見直すと良いでしょう。
僕「完璧やん」
『睡眠障害対処 12の指針』の内容を見るに、どうやら僕が精神科で学んだ「睡眠障害の対処法」は、これを元にしていたのかもしれません。
12の指針の中でも、僕が特に効果があったと実感する項目を紹介します。
睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
睡眠に関するライフハックでは、よく「22時に寝れば最強」や「8時間の睡眠が最も健康的である」などといった言説がありますが、当然、それらは人によります。
8時間以上眠らなければ本来のパフォーマンスを発揮できない人もいれば、一日に5時間程度の睡眠で十分な活動が可能である人もいる──。
睡眠時間の長短は季節や気圧、その日の体調などの要因によっても変化します。むしろ、"8時間は眠らないと"という固定観念が焦りに繋がり、逆に睡眠時間を短くしてしまう原因ともなります。
刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
資料では「就床前4時間のカフェイン摂取を避ける」とされていますが、僕の場合は、寝る前8時間はカフェインをとらないようにしています。
つまり、夜11時に寝るとして、午後3時以降はコーヒーや緑茶など、カフェイン含有の飲み物を飲まないということですね。
コーヒー1杯で"ガン決まり"してしまう「コスパ最強の次世代ハイブリッド型」の僕にとっては、その"たった1杯"が睡眠の質にモロに影響してしまう、諸刃の剣なのです。
また、寝る前の習慣として、マインドフルネス瞑想と自律訓練法を実践しています。
うつ病の症状が酷いときは12時間以上ぶっ続けで寝ていることも珍しくはありませんでしたが、症状が改善し始めてからは、瞑想をしながら睡眠のリズムを構築することを意識していましたね。
眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
これは、精神科からの医師、またカウンセラーの先生からも再三言われていたこと。ここで重要なのは「眠気を溜める」という概念なのだと思います。
眠くないのに寝ようとすると、脳が「ベッド=眠れない場所」と認識してしまい、余計に睡眠障害を悪化させる要因となります。
また、就寝時刻にこだわっても、それは結局「まだ眠れない」という焦りにつながります。
正直に言うと、睡眠障害を抱えている人にとって「眠たくなってから床に就く」ことは非常に難しいことです。まあ、慣れません。
「もう2時だ、早く寝なきゃ」「このままだと4時間しか眠れない」「もっとちゃんと眠れるようにならなきゃ」
睡眠障害はしばしば他の精神疾患とのコンボで表れるため、その症状と相まって強烈な不安や焦りを引き起こし、また睡眠障害に陥るという悪循環にハマりやすい。
だから、いっそ開き直ったほうがいいのです。眠れないなら眠れないで、布団から出て、読書なり、軽めのストレッチなりをして、自分をリラックスさせることを優先しましょう。
これは8番の「眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに」にも通じることですね。
昼寝をするなら、15時前の20~30分
僕は自宅で療養していたこともあり、うつ病の症状が酷いときは平気で2~4時間ほど昼寝をしていました。
しかし、今になって思えば、それがかえって入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒、悪夢などの睡眠障害を引き起こしていたような気がします。
睡眠障害を抱えていると控えめに言っても日中の眠気がヤバすぎるのです。とても20分程度の昼寝で返済できるような眠気ではない、と思ってしまうんですね。
ところが、意外なことに、20分の昼寝だけでも眠気が解消され、頭がクリアになることが多い。また眠ってしまうにしろ、とりあえず20~30分で一度起きたほうが良いです。
睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
睡眠薬と聞くと、どうしても依存性や危険性が頭をよぎり、そういった薬に頼ることに抵抗を覚えることがあります。
とはいえ、はっきり言って、今の医学はすごい。僕は眠剤としてマイスリー(ゾルピデム)を処方してもらっていましたが、マジで入眠困難がなくなり、ストンと眠れるようになりました。
睡眠障害の辛いところは「寝たくても眠れない」「夜中に目が覚めてしまう」「もっと寝ていたいのに目が覚めてしまう」といったところにあると思います。
医師の指示で正しく使うことが前提ですが、睡眠障害の症状が酷いときは眠剤パワーを借りるのもかなり有効な一つの手段と言えるでしょう。
僕の場合は結局それでも睡眠障害は完全にはなくならなかったのですが、「眠剤を飲めば、いつもよりは長く眠れる」という事実は大変心強いものがありました。
もちろん、薬だけでどうにかするのではなく、『睡眠障害対処 12の指針』の内容を意識することは必須ですが。
まとめ
特に、資料の1, 2, 3番の項目は睡眠障害を抱える人でなくとも意識してほしい点ではあるなと感じます。
「22時に寝ると最強」「睡眠は8時間以上が正義」みたいなしょうもないライフハックが固定観念としてこびりついてしまうと、結局はそれが睡眠障害の原因ともなってしまう可能性もあります。
大事なのは、自分の睡眠と向き合うこと。統計は単なる統計でしかなく、睡眠に関するセオリーも結局は「多くの人に当てはまる法則」でしかないのです。自分に合う方法は自分で見つける他ない。
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成人用だけど、睡眠障害について
結構良いのではないかな。 pic.twitter.com/GnDnTvUfS9— てんねんDr. (@adhdsavetheplan) October 16, 2024