うつ病になったことをきっかけに、思考力、集中力、行動力、生活習慣など、自分を構成する様々な能力とルーティンが強制ゼロリセットされました。
今まで出来ていたことが出来ない、食べられていたものが食べられない、考えられていたことが考えられない──。そんな絶望する毎日──。
皮肉なことに、病気になってやっと自分と本当の意味で向き合い、心身の健康のために何ができるのかを考える時間ができたわけです。
それから数年をかけ、一歩ずつ、自分にとって有効と思える習慣を作れるように行動を重ねてきました。
継続習慣
今、確実に習慣になったと感じるものは以下の通り。
- モーニングページ
- 朝散歩
- 筋トレ
- 瞑想
- 読書
- 料理
- 作曲
これらは、もうかれこれ2~3年は続けられていて、自信を持って習慣化に成功したと言えるものです。
こうして箇条書きにしてみると『たったこれだけか』と物足りなさを感じてしまうものの、ここに来るまでどれだけ苦労したかを考えると素直に自分を褒めたくなりますね。
習慣は心身の健康のバロメーター
いくつか決まったルーティンを持っておくと、自分の心身の状態を把握するのに役立ちます。
少しでも自分の状態が悪くなると、ルーティンの中に"引っ掛かり"が生まれるので、心身のエラーを発見しやすいんですよね。
例えば、散歩であれば、心の状態が悪いとリラックスできず、頭の中が常に騒がしい。反対に調子が良いときは、鳥の声や木々のさざめき、風の心地よさを感じることができる。
読書であれば、調子が悪いときは何度も同じ行を読んでしまったり、文字は目で追っているのに内容を理解できなかったりする。調子が良いときは、すんなり集中できる。
料理でも、調子が悪いと『これには5分ぐらいかかるかな。じゃあ今のうちにこれをやっておこう』といった当たり前の思考ができなくなる。焦って細かいミスが増える。
作曲なら、メロディが思い浮かばない、アレンジに納得できない、ミックスのバランスが取りづらいなど、なぜか上手くいかないという場面によく遭遇する。
身体のどこかに違和感や疲労、痛み、痒み、だるさがあったときも、普段からアンテナを張っておくことで気付きやすくなる。
複数のルーティンはフィルターの役割を持つ
こうした心身の健康のバロメーターをより正確に測るためには、複数のルーティンを持ち、包括的にチェックすることが有効だと感じています。
モーニングページで検知できなかった心のエラーも、瞑想なら発見されるかもしれない。それで見つからなかったとしても、読書、料理、作曲──といったように"次の網"がある。
ひとつのルーティンだと見逃しやすい心のエラーも、別のルーティンで検知される可能性が高まる──つまり、ろ過装置のフィルターのように機能してくれるんですね。
精神的な調律
また、洗練されたルーティンは、心身の状態エラーを発見する他、自分の感覚を調整するためのツールとしても機能します。
ここで、アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』から、天才犯罪者・槙島聖護のセリフを紹介したい。
本はね、ただ文字を読むんじゃない。自分の感覚を調整するためのツールでもある。(中略)
調子の悪いときに本の内容が頭に入ってこないことがある。
そういうときは、何が読書の邪魔をしているか考える。調子が悪いときでもスラスラと内容が入ってくる本もある。
なぜそうなのか考える。精神的な調律、チューニングみたいなものかな。
調律する際大事なのは、紙に指で触れている感覚や、本をペラペラとめくったとき、瞬間的に脳の神経を刺激するものだ。
槙島にとって「本を読むこと」は自分の感覚を調整するためのツールであり、精神的な調律の役割を担う"ルーティン"になっていることが窺えます。
人によってどのようなルーティンが「精神的な調律」になっているのかは様々ですが、少なくともひとつは持っておくと良いと思っています。
僕の場合、それは「文章を書くこと」、そして「本を読むこと」のふたつ。特に、手書きでノートに文章を書いていると、かなり高い精度で精神状態をチェックできます。
習慣化によって洗練されるルーティン
人間の思考と行動はおよそ9割が習慣によるものと言われていますが、その中にはもちろん悪い習慣、非効率な習慣も含まれています。
習慣化の力を借りることで、既存の習慣よりも効果が高く、効率化されたオートメーションに置き換えることが可能となるわけです。
そして、一度身につけた習慣は、川を転がり落ちる石が少しずつ角が取れて丸くなっていくように、繰り返し実践することで無駄が削ぎ落とされ、次第に洗練されていく。
心身の状態を測るバロメーターに、精神的な調律としての機能、自動化によってさらに洗練されるルーティン──。習慣化はまさに良いこと尽くめだ。