今日できることは明日に延ばしてもいい。ただし、今日のネガティブは明日に延ばすな

「今日できることは明日に延ばすな」の重圧から解放される

よく耳にする「今日できることは明日に延ばすな」という言葉──。これは、どこか「正しいこと」や「美徳」として語られることが多いです。

しかし、僕はむしろ、「今日できることは明日に延ばしてもいい」という余裕を持つ生き方のほうが現実的だと思うんですよ。

実際、どれだけ計画を立てても、時間や体力には限りがあり、すべてをこなせるわけではありません。

だからこそ、やるべきことをすべて今日中に終わらせようとするのではなく、いくつかを明日に延ばすという柔軟な思考が大切なんじゃないでしょうか。

完璧主義がもたらすトラップ。ToDoリストは消えない

ToDoリストを作れば作るほど、その中には必ず達成できなかった項目が残ります。

それに目が向いてしまうと、「今日は何もできなかった」と自己否定に陥りがちになります。

しかし、「今日できたこと」が少しでもあるなら、それをしっかりと評価することが何よりも重要

人はどうしても「できなかったこと」に意識を集中させてしまいます。だからこそ、「今日できたこと」をカウントし、自分の進歩や成長を見逃さないようにすることが大切なんです。

ここで参考にしたいのが、アルバート・エリスが提唱した合理的情動行動療法(REBT)です。

エリスは「人々の苦しみの多くは、自分に対して過度に厳しい要求を課すことにある」と指摘しました。

完璧である必要はないし、すべてを今日中に終わらせる必要もない。むしろ、自分に対して合理的な期待を持ち、自己を受け入れることが精神的な安定に繋がるのだ──と。

「今日できたこと」を数える日々を過ごす

たとえば、たったひとつでも「今日できたこと」があれば、それで十分。──いや、極端な話、「できたこと」すら数えなくてもいいのかもしれない。

マインドフルネスの観点から言えば、「今日楽しかったこと」「今日面白かったこと」「今日感動したこと」など、ポジティブな体験を1つでも意識するだけで、今日という日の意味は十分にあると言えます。

現代社会では、特に成果主義労働信仰が強調されすぎる傾向があります。

その結果、常に何かを成し遂げなければならないというプレッシャーに押しつぶされ、些細な進捗を見逃しがちになる。

エピクロスの「心の平静(アタラクシア)」を目指す姿勢──つまり、日々の小さな幸福や心の平穏を大切にすることこそが、豊かな人生へのカギと言えるでしょう。

「今日のネガティブは明日に延ばすな」

ただし、「今日できることを明日に延ばしてもいい」に賛同する一方、もうひとつ重要な教訓があります。

それは、「今日のネガティブは明日に延ばすな」ということ。

ネガティブな感情やストレスを抱えたままにしておくと、それは確実に積み重なり、どこかで大きな反動として現れます。

これは、心理学的に「感情の残留」と呼ばれる現象で、「抑圧された感情は必ずしも消えるわけではなく、心に負担をかけ続ける」というものです。

キルケゴールの言葉を借りるなら、「不安は未来の一部ではなく、現在に存在する」とされるように、今この瞬間の感情を無視することは未来に対して良い影響を与えません。

だからこそ、今日のネガティブな感情はその日のうちにできるだけ処理し、明日はまた新しい一日として迎えることが大切なんですね。

──宵越しのネガティブは持たない。たった今思いついた言葉ですが、座右の銘にしようかな、これ。

瞬間瞬間を生きるということ

僕たちの時間は、過去や未来に縛られているようでいて、実際は瞬間瞬間の積み重ねに過ぎません。

過去が未来に影響を与えると考えがちですが、それは単なる思い込み──もとい、ただの概念です。

時間は地続きのように見えますが、実際には「今」という瞬間が連続しているだけ。映画と同じです。

映画では、1コマが表示されたあと、一瞬のブランキング──フレームが次のコマに切り替わる瞬間に、プロジェクターのシャッターが閉じてスクリーンが一瞬暗くなること──を挟んで、次のコマに切り替わります。

この繰り返しで映像は滑らかに見えるわけですが、実際はコマごとの瞬間の連続に過ぎないんですよね。

時間もこれと同じで、実際は一瞬一瞬がブランキングを挟んで積み重なっているだけです。いわば、過去や未来は幻想であり、今この瞬間が連続して現実を作り出しているとも言えるでしょう。

この考え方は、存在論的な時間理解にも通じ、今この瞬間を大切に生きることこそが本質であると示唆します。

未来は不確定。しかし、それが必ずしもネガティブなこととは限らない。むしろ、過去に困難や苦悩を経験してきた分だけ、未来は上向いていく可能性が高い。

だからこそ、今この瞬間を楽しみ、平穏に過ごすことを意識するべきなのだと僕は思うのです。

成果主義を超え、バランスの取れた生き方へ

「今日できることは明日に延ばしてもいい」

この言葉が示すのは、現実的で柔軟な生き方です。完璧主義や成果主義にとらわれず、自分にとって無理のない範囲で、今この瞬間を大切にする──。

そして、「今日のネガティブは明日に延ばさない」という意識を持ちながら、未来の可能性を信じて、心の余裕を保つことが、長い目で見てより充実した人生へと繋がるのではないでしょうか。

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