SNS時代を生き抜くヒント、ゲーテ的な思考法で理想と現実のバランスを保つ

現代社会──特に日本──では、SNS疲れを始めとした様々な問題が頻繁に取り上げられています。ニーチェの人間観──ルソー的人間とゲーテ的人間を参考にすると、SNSの普及や批判的思考の欠如が社会に与える影響を理解しやすくなります。

今回は、「ルソー的人間」と「ゲーテ的人間」を軸に、現代社会における課題を分析し、どのようにバランスを取るべきかについて考えてきます。

ルソー的人間とは?

ロマン主義と理想主義

ルソー的人間は、ロマン主義的な理想を追い求める傾向が強いとされています。このタイプの人間は、内なる感情や理想に忠実で、理想の世界を強く信じます。

しかし、その理想主義が現実的な条件を無視してしまうことが多く、現実的な問題に直面すると対処しきれない場合がよくあるんですね。ルソー的な性質は特に若者に多く見られ、自分の理想を情熱的に叫ぶ一方で、具体的な実行策が欠如していることが特徴です。

現代社会におけるルソー的人間

現代社会では、SNSのようなプラットフォームがルソー的人間の表現の場となりがち。SNS上での感情的な発言や、炎上を引き起こすような短絡的な行動は、ルソー的人間の典型的な特徴です。これには、以下のような問題が含まれます。

  • SNSの炎上:感情的な発言が即座に拡散され、問題が大きくなる一方で、冷静な対話や問題解決に向けた建設的な議論が行われにくい。
  • 闇バイト問題:短期的な利益や快楽を求め、長期的なリスクを考えない行動が目立つ。
  • 批判的思考の欠如:現代の日本社会では、批判的に物事を考える力が十分に育っておらず、感情的な反応や流行に流されやすい状況にある。

これらの現象は、現実を踏まえた冷静な対応よりも、感情や理想を先行させてしまうルソー的人間の行動パターンと結びついていると考えられます。

ゲーテ的人間とは?

理想と現実のバランス

一方、ゲーテ的人間は理想を持ちながらも現実をしっかりと見据え、冷静に行動することができる人間です。このタイプの人は、感情に流されることなく、現実的な制約を理解した上で、理想の実現に向けて着実に歩を進めます。ニーチェの哲学において、ゲーテ的人間は成熟した人間像を象徴しています。

ゲーテ的人間は、理想と現実のバランスを取ることができるため、理想を掲げつつも、それを実現するための方法や手段を冷静に考え、実行に移すことができます。彼らは感情的な衝動に流されることなく、周囲の状況を分析し、論理的に物事を進める能力を持っています。

現代社会におけるゲーテ的人間とは

現代の日本社会では、ゲーテ的人間のように冷静で論理的なアプローチが求められています。特に以下のような点で、ゲーテ的人間の視点が重要になるでしょう。

  • 生成AIをめぐる議論:AI技術が進化する中で、感情的な反応や恐怖だけに基づいた議論ではなく、技術の現実的な可能性や限界を理解し、冷静に対処する必要がある。
  • 批判的思考の強化:情報が溢れる現代では、信頼性のある情報を見極め、偏った考えに陥らないための批判的思考が不可欠である。
  • 持続可能な社会の構築:環境問題や経済的課題に対しても、理想的な解決策を描きつつ、現実的なステップを踏むことが重要。

ルソー的人間が多い理由

現代社会でルソー的人間が多い理由は、SNSやインターネットが感情的な表現を促進しやすい環境を作り出していることが一因です。SNSは、瞬時に自分の意見を発信し、他者と共感し合う場として機能しますが、その反面、冷静な思考や長期的な視点が省略される傾向があるんですね。

さらに、日本の教育システムでは批判的思考が十分に養われていないことも影響しています。知識を暗記することが重視され、個々の思考力や問題解決能力を育てる機会が少ないために、若者が自分の感情や理想に依存しやすくなる環境が整ってしまっているのです。

ゲーテ的人間になるための方法

では、どうすればゲーテ的人間のような視点を持てるのでしょうか。以下に、具体的な方法を挙げてみます。

1. 批判的思考の習得

批判的思考を身につけることは、ルソー的な感情主義から脱却し、ゲーテ的な現実主義に近づくための第一歩。情報を鵜呑みにせず、自分で考え、他の意見やデータと照らし合わせることで、より深い理解が得られます。

僕の場合、SNSでの炎上やセンセーショナルなニュースに対しては、とりあえず「批判的な見方」をすることから始めます。例えば、「炎上の原因は本当に◯◯なのか?」や「この事件の問題の本質は本当に◯◯なのか?」と考えてみるのです。

順番としては、まず批判的思考を持つ、次に仮説を立てる、最後にそれらをAIに壁打ちするなりソースを確認するなりして本質を見極める──といった具合ですね。慣れると数分かからないので、余計な情報に振り回されなくなります。ゲーテ的人間に、僕はなりたい。

2. 情報リテラシーの向上

現代は情報過多の時代であり、信頼できる情報を見極める力が求められています。SNSやニュースの断片的な情報だけで判断せず、広範な視点で物事を見つめることが重要です。

特に、インフルエンサーと呼ばれる影響力のある人物の情報は、注意深く検証する必要があります。確かに、彼らの地位や肩書きは、情報の信頼性を判断する一つの要素と言えるかもしれません。しかし、だからこそ、僕たちは彼らの発信する情報に対して、より慎重な姿勢で臨むべきなのです。

人は、権威に無条件の信頼を置きがち。そのため、権威に引きずられ、真実を見誤ってしまうことがあります。また、人は様々な認知バイアスを抱えており、無意識のうちに情報を選別してしまいます。

例えば、〇〇というインフルエンサーが発信した情報が、後に事実と異なることが判明した──というケースがあるように、人の認識は、いとも簡単に歪んでしまうのです。

3. 感情のコントロール

ルソー的人間は感情に動かされがちですが、感情をコントロールし、冷静に物事を考える力を養うことが重要です。これは、特にSNS上での発言や行動において重要なポイントと言えるでしょう。

批判的思考を持ちつつも、感情的な発言や、偏った意見に冷静に対処する──。これは、一朝一夕に身につくものではありません。しかし、日頃からマインドフルネス的な姿勢を持ち、瞑想を取り入れることで、感情のコントロール力を確実に育むことができます。

また、異なる視点から物事を捉えようとする努力も大切です。マインドフルネスや瞑想は、自分の内面を観察し、感情を客観的に捉える力を養います。これにより、感情に振り回されることなく、冷静な判断を下せるようになるんですね。

4. 長期的な視点を持つ

ゲーテ的人間は短期的な結果にとらわれず、長期的な視点で物事を考えます。理想を持つことは大切ですが、その理想を実現するための現実的なステップを踏むことが必要です。

しかし、特にSNSの普及によって経済の格差が見立つようになった現代社会では、他人と豊かさや幸せを比べることが当たり前となっています。SNS上では、他人の成功や幸せが常に目につくため、相対的に自分が不幸だと感じてしまうことがあるんですね。

また、日本の「恥の文化」は、失敗を恐れて新しいことに挑戦することをためらわせ、自己肯定感を低下させる要因となります。結果として、すぐに豊かさや成功を手にしようとしてしまい、詐欺に遭ったり、闇バイトなど違法行為へ知らず知らずのうちに加担してしまうことになるのです。

長期的な視点を持つためには、まず自己肯定感を高め、自分の強みや価値観を認識し、小さな成功体験を積み重ねることが重要です。目標を具体的に設定し、計画的に行動することで、徐々に自信を持つことができるようになっていくはず。千里の道も一歩から。

まとめ

現代の日本社会において、SNSの普及や教育制度の影響でルソー的人間が多く見られる一方で、ゲーテ的人間の視点が求められています。感情や理想だけに流されるのではなく、批判的思考や冷静な判断を持ち、現実を見据えた行動を取ることが重要なのです。