幸せの定義のハードルが下がったことによる弊害【ミニマリズム的な幸福論】

最近、ふと気付くことがあります。過去の経験を通じて、以前よりも「幸せ」の定義がどんどんシンプルになってきたな──と。

幸せのミニマリズム

詳しくは省きますが、ホームレスのような生活をしていた時期があり、その経験から本当に多くのことを学びました。雨風をしのげる場所があること、洗濯機を使えること、寝ている間に得体の知れない動物に襲われる心配がないこと、猿に追いかけられないこと──。

こうした「当たり前」とされていることが、どれだけ大切か、何度も痛感しました。

また、治安の悪い発展途上国で暮らしていたときには、スリや強盗の危険と隣り合わせの日常を経験しました。その結果、日本の安全な街に対する感謝の気持ちも芽生えました。

強盗や銃撃の心配がない環境、食卓にハエが飛び回らないこと、勢いのあるシャワー、清潔で安全な水道、スムーズに使えるトイレ、列を守る人々のモラル、落とした財布が戻ってくる親切さ──。かつて「当たり前」だと思っていたこれらのことが、今では「幸せ」として深く心に響くようになったんです。

さらに、PTSDとうつ病の療養を通じて、死にたい気持ちと闘わずに済む日がどれだけありがたいか、悪夢を見ずに朝を迎えられることがどれだけ素晴らしいかも実感しました。質の高い治療を比較的安価に受けられること、そして心身の健康に感謝することの大切さを再認識しました。

「幸せのミニマリズム」とでも言いましょうか──。過去の困難な経験を通して、僕の幸福の基準はどんどん低くなっていったのです。

幸せのハードルが下がることによる弊害

一見すると、この「幸せのミニマリズム」は、過剰な消費社会や競争の激しい成果主義に対する一種の救いのように見えるかもしれません。

──しかし、実は問題もあるんです。

それは、幸せのハードルが下がりすぎることで、それ以上を求めなくなる──つまり「成長しない自分」に気付く瞬間がある、ということ。

たとえば、「衣食住が整っていればそれでいい」という基準が、いつの間にか「これ以上は望まなくていい」という感情に変わってしまい、その結果、新しい挑戦や目標が見えなくなることがあるんですよね。

むしろ、「今のままで十分」という考えが、新しい体験や自己成長への欲求を抑えてしまうことさえあるかもしれません。

成長と幸福のバランス

マズローの「欲求階層説」によれば、人は基本的な生理的欲求や安全欲求が満たされると、自己実現に向けた成長を求めると言われています。しかし、僕のように「幸せの基準が下がる」と、この自己実現の欲求が鈍くなり、成長のプロセスが停滞することもあるんじゃないでしょうか。

経済学の観点から見ると、幸せのミニマリズムは一時的な満足感をもたらすものの、長期的には個人の成長や社会全体の進歩を阻害する可能性もあります。

たとえば、経済成長を支える「消費」は、社会全体の活力や革新に不可欠です。個々が新しいものを追い求め続けることで、社会も発展します。しかし、消費を拒否する生き方が広まると、経済の停滞や創造性の低下を招く可能性もあります。

幸せのハードルが下がったことは悪いことか?

もちろん、幸せのハードルが下がること自体が、必ずしも悪いわけではありません。むしろ、僕自身にとっては、この「幸せのミニマリズム」が大きな救いとなったことは間違いありません。

マルクスの「疎外論」によると、過度な労働や消費が人間本来の存在意義を歪めるとされていますが、僕はその罠から抜け出しつつあるのかもしれません。

過剰な競争や成果主義に追われず、今ある幸せに目を向けられるようになったのは、ある意味で「成功」と呼べるかもしれないのです。

幸せの定義を再考する

とはいえ、やはり僕は「この状況が自分の成長にブレーキをかけているのではないか」という疑念を完全には拭い去れません。幸せのハードルが下がることで、挑戦や冒険心が失われ、あまりに「安定」しすぎた生活に満足しすぎる可能性があるからです。

だからこそ、重要なのは、自分にとっての「幸せ」とは何かを常に再定義すること。

確かに、過去の困難を乗り越えて今の生活に感謝することは素晴らしいこと。しかし同時に、その安定に甘んじることなく、新しい挑戦や体験にも目を向けていくことが、真の自己成長に繋がるのだと思っています。

まとめ

幸せのハードルが下がったことは、僕にとって一種の救いであり、過去の経験から得た貴重な価値観です。

ですが、成長を求め続け、新しい目標を見失わないためにも、幸せの定義を定期的に見直すことが必要だと感じています。

ひとつ間違いなく言えることは、猫のいる暮らしは最高だ。

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