【超要約】10分で読む『FACTFULNESS/ファクトフルネス』世界を正しく見る習慣が身につく

日本国内で85万部を突破し、2020年上半期のビジネス書ランキングで1位となった『ファクトフルネス』。

10分で全体像を掴めるように、内容をわかりやすく要約しています。

『FACTFULNESS/ファクトフルネス』を読むとどうなる?

『FACTFULNESS/ファクトフルネス』を読むことで、事実に基づいて世界を『正しく』見る習慣が身につきます。

FACTFULNESS(ファクトフルネス)とは?

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』は著者ハンス・ロスリング氏の造語で、「事実に基づいて世界を正しく見よう」という意味が込められています。

さらにわかりやすく概念を理解するために、本書で紹介されている3つのクイズを出題します。

Q1.現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?

A.20%
B.40%
C.60%

Q2.世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?

A.約2倍になった
B.あまり変わっていない
C.半分になった

Q3.世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?

A.20%
B.50%
C.80%

答えは、上から順に「C.60%、C.半分になった、C.80%」です。ちなみに日本での正解率は、それぞれ「7%、10%、6%」でした。

なぜ、チンパンジーに負けてしまうのか

本書ではこうした貧富、人口、出生、死亡、教育、保健、ジェンダー、暴力、エネルギー、環境など「世界の事実についてのクイズが「13問」用意されています。

2017年に14カ国・1万2,000人に行ったオンライン調査では、地球温暖化の質問を除き、

平均正解率:12問中たったの2問
全問正解者:0人
全問不正解:なんと15%

という結果になりました。

このクイズは、さまざまな国の、さまざまな分野で活躍する人々、たとえば、大学教授、著名な科学者、投資銀行のエリート、政界のトップまで、高学歴で国際問題に興味がある人でも正解率が低かったのです。

仮に動物園のチンパンジーに答えさせたとしても、正解率は約33%になるはずです。なぜ、チンパンジーに負けてしまうのでしょうか?

著者は、『何も知らないというより、みんなが同じ勘違いをしているといったほうが近いかもしれない』と言います。

ほとんどの人は、世界は実際よりも怖く、暴力的で、残酷だと思うほうの回答を選んでいたのです。

『FACTFULNESS/ファクトフルネス』を読み終える頃には、こうしたドラマチックな思い込みをせずに、事実に基づいて世界を正しく見ることができるようになっているはずです。

世界についての誤解を生む「10の本能」

では、なぜわたしたち人間は悲観的な思い込みをして、世界の見方を歪めてしまうのでしょうか?

それは、人間の脳に組み込まれた「本能」が原因です。

本書では、世界についての誤解を生む「10の本能」を解説しています。

  1. 分断本能「世界は分断されている」という思い込み
  2. ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
  3. 直線本能「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
  4. 恐怖本能 危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思い込み
  5. 過大視本能「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
  6. パターン化本能「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
  7. 宿命本能「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
  8. 単純化本能「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
  9. 犯人探し本能「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
  10. 焦り本能「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

今回は、このうち3つの本能に絞って内容を見ていきたいと思います。

分断本能「世界は分断されている」という思い込み

分断本能とは、

さまざまな物事や人々を2つのグループに分けないと気がすまない
2つのグループのあいだには、決して埋まることの溝が存在するはずだ

という考えや思い込みのことです。

たとえば、「途上国」と「先進国」を考えてみましょう。おそらく、これらの言葉を使うとき、人々の頭の中では「貧しい国」と「豊かな国」といった分類がなされているかと思います。

途上国と先進国を考えるとき、それぞれの国を円(バブル)で表したチャート(グラフ)が用いられることがありますよね。

右上の「先進国」にはアメリカや日本、ヨーロッパのほとんどを含む44ヶ国が位置していて、インドや中国を含む125カ国が「途上国」に分類されている図です。

しかし、これは1965年の世界を表したチャートです。2017年の世界はどうなっているのでしょうか?

なんと「先進国」の枠には世界の全人口の85%が入っています。いまだ「途上国」の枠に入っているのは、全人口の6%、たった13カ国だけです。

このことから、世界の国々を「途上国」と「先進国」という2つのグループに分けて考えるのは正しくないと言えるでしょう。

分断本能を防ぐためには?

話の中の「分断」を示す言葉に気づくことが大切です。多くの場合、2つのグループに分断はなく、大半の人が中間部分にいます。

「平均の比較」に注意:2つのグループには重なりがあり、分断などないことが多い。

「極端な数字の比較」に注意:人や国のグループには必ず「最上位層」と「最下位層」が存在するが、多くの場合、大半の人は中間層に位置する。

「上からの下式」であることを思い出す:高いところから低いところを正確に見るのは難しい、ということを思い出す。

ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

ネガティブ本能とは、物事のポジティブな面よりもネガティブな面に気づきやすいという本能です。

「世界はどんどん悪くなっている」という思い込みから抜け出せない原因もこの「ネガティブ本能」にあります。

ネガティブ本能を刺激する要因は以下の3つです。

  1. あやふやな過去の記憶
  2. ジャーナリストや活動家による偏った報道
  3. 状況がまだまだ悪いときに、「以前に比べたら良くなっている」と言いづらい空気

いま起きている悪い出来事ばかりを目にしていれば、誰でも悲観的になります。

加えて、思い出や歴史は美化されやすいため、いま以上に悪い出来事が起きたことを忘れてしまうのです。

ネガティブ本能を防ぐためには?

ネガティブなニュースに気づくことが大切です。物事が良くなったとしても、そのことについて知る機会は少ないので、どうしても世界について悪いイメージを抱くようになってしまいます。

「悪い」と「良くなっている」は両立する:「悪い」は状態、「良くなっている」は変化の方向。2つは両立する。

良い出来事はニュースになりにくい:ほとんどの良いニュースは報道されない。

ゆっくりとした進歩はニュースになりにくい:長期的には進歩が見られても、後退のほうが人々に気づかれやすい。

悪いニュースが増えても、悪い出来事が増えたとは限らない:「悪いニュースが増えた」と「世界が悪くなった」はイコールではない。

美化された過去に注意:人々は過去を美化したがり、国家は歴史を美化したがる。

宿命本能「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

宿命本能とは、持って生まれた宿命によって、人や国や宗教や文化の行方は決まるという思い込みのことです。

「アフリカはこれからも貧しいままだ。それがアフリカの宿命なんだ」という意見を耳にすることがありますね。

たしかに、アフリカ大陸全体を見れば、ほかの大陸よりも遅れていると言えるでしょう。現在アフリカで生まれる新生児の平均寿命は65歳と、西洋に比べて17歳もの差があります。

しかしアフリカの国がすべて、世界に遅れているとは言えません。チュニジア、アルジェリア、モロッコ、リビア、エジプトの5カ国の平均寿命は世界平均の72歳を上回っています

社会と文化は常に変わり続けており、たといえ小さな変化であっても、積み重ねれば大きくなります。

毎年1%の成長では遅いと思えても、70年後には倍になりますし、2%なら35年で倍、3%なら倍になるまで24年しかかかりません。

ゆっくりとした変化だとしても、変わっていないわけではないということを覚えておきたいものですね。

宿命本能を防ぐためには?

人や国、宗教、文化が変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと少しずつ起きているからだと気づくことが大切です。

小さな進歩を追いかけよう:毎年少しずつの変化でも、数十年後には大きな変化になる。

知識をアップデートしよう:賞味期限の短い知識もある。

おじいさんやおばあさんに話を聞こう:価値観がどれだけ変わったかを知ることができる。

文化が変わった例を集めよう:文化は昔から変わらない、同じだ、と言われたら逆の事例を探してみる。

まとめ

著者のハンス・ロスリング氏は、『ファクトフルネス』を書こうと決めた翌年に末期のすい臓がんと宣告されました。

がんを宣告された同じ週、すでに決まっていた67の講演、テレビ出演、ラジオ出演、映画製作を取りやめ、残された時間をすべてこの本の執筆にあてたそうです。

最期の最期まで世界の真実を伝えようとした人の言葉に、嘘や偽りがあるとは思えませんよね。

『FACTFULNESS/ファクトフルネス』に書かれた「10の本能」を理解することで、普段の日常生活でも思い込みによる勘違いに気づけるはずです。

ぜひ、ファクトフルネスな視点で、世界を正しく見る習慣を身につけてみてください。

via : 『ファクトフルネス』ウェブ脚注 / Trend for Number of Children per Woman and Surviving Children