スマホやSNSの普及により、僕たちは常に情報や刺激に囲まれています。その結果、退屈を感じる機会が減っているのではないでしょうか。しかし、実はこの「退屈」こそが、自己理解を深める貴重な機会とも言えるのです。
今回は「退屈日記」という新しい自己探求の方法について詳しく見ていきたいと思います。
現代社会における退屈の価値とは?
過剰な刺激社会と仮初の幸福
現代社会では、幸福や成功の形が商業や社会的価値観によってデザインされています。つまり、SNSでの「いいね」の数や、高級ブランド品の所有など、外部からの評価や物質的な豊かさで幸福を測ろうとする傾向がある、ということです。
しかし、このような「仮初の幸福」の追求に疲れ、本当の自分と向き合いたいと感じる人が増えていることも事実と言えるでしょう。
退屈が持つ可能性とは?
退屈は、一見するとネガティブな感情のように思えます。しかし、心理学者のサンディマンは、その著書「The Science of Boredom: The Upside (and Downside) of Downtime」で次のように述べています。
「退屈は、創造性を刺激し、問題解決能力を高める可能性があります。それは、私たちの脳に『デフォルトモード』に入る時間を与え、自己反省や将来の計画を立てる機会を提供するのです。」
つまり、退屈な時間こそ、自分の内面に目を向け、自己理解を深める絶好のチャンスと言えます。
デフォルトモード──デフォルト・モード・ネットワークの持つ重要性は、日本でも樺沢紫苑先生の著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』でも詳しく知ることができます。
参考:脳疲労はマインドフル瞑想とDMNの活性化で回復できるらしい
「退屈日記」の始め方
では、具体的にどのように退屈日記をつければいいのでしょうか。以下に、退屈日記をつける際のポイントをまとめてみました。
1. 退屈を感じた瞬間を記録する
退屈を感じたその瞬間、できるだけ詳細に状況を記録する。
例:「4月10日午後3時、カフェでコーヒーを飲みながらスマホをいじっていたとき、突然退屈を感じた。」
2. 感情や身体の変化をメモする
退屈を感じたときの感情や身体の変化を細かく観察し、記録する。
例:「胸がモヤモヤする感じがした。肩に力が入り、なんとなく焦りを感じた。」
3. 退屈の原因やきっかけを深く掘り下げる
なぜ退屈を感じたのか、その原因を探ってみる。
例:「SNSを見ても新鮮さを感じられず、本当にやりたいことが見つからなかった。」
4. 退屈への対処法を振り返る
退屈を感じたとき、どのように対処したかを記録する。
例:「深呼吸をして、周りの景色をじっくり観察してみた。すると、少しずつ心が落ち着いてきた。」
「退屈日記」がもたらす効果とは?
退屈日記を続けることで、どんな効果が期待できるのでしょうか。
1. 自己理解の深化
退屈な瞬間を記録し、分析することで、自分の内面や欲求をより深く理解できるようになります。例えば、「退屈を感じるときは、実は新しいチャレンジを求めているのかもしれない」といった気づきが得られるかもしれません。
2. 創造性の向上
2014年の研究「Does Being Bored Make Us More Creative?」では、退屈な作業の後にクリエイティブな課題に取り組んだグループの方が、より創造的な解決策を見出したという結果が報告されています。退屈な時間を活用することで、創造性が高まる可能性があります。
3. マインドフルネスの実践
退屈を観察することは、一種のマインドフルネス実践とも言えます。退屈な感覚に意識を向けることで、現在の瞬間により深く気づくことができるようになります。
参考:マインドフルネスと退屈は両立できる?「今を生きる」の真の意味
退屈を受け入れ、活用するためのヒント
退屈日記を始めるにあたって、退屈を積極的に受け入れ、活用するためのヒントをいくつか紹介します。
- 退屈を判断せずに観察する:退屈を「良い」「悪い」と判断せず、ただ観察してみる。
- 瞑想を取り入れる:短い瞑想を行い、退屈な感覚に意識を向けてみる。
- 創造的な活動を試す:退屈を感じたら、絵を描いたり、文章を書いたりしてみる。
- 自然と触れ合う:外に出て、自然の中で過ごす時間を作る。
- 技術からの一時的な解放:スマホやPCから離れ、「何もしない時間」を意識的に作ってみる。
退屈日記を始めてわかったこと
1週間ほど「退屈日記」を続けてみてわかったことがいくつかあります。これはあくまで僕の例です。
- 退屈を感じるタイミングは、一日の中で割と決まっている(午後3時、午後7時、午後9時あたり)
- 大抵は、疲労とセットで退屈を感じることが多い(ゆえに短時間の昼寝により退屈な気分がかなり解消される)
- 表れる感情は、不安や焦りが多く、それも実は疲労が原因であることが多い
- 退屈を感じた時に短時間でもマインドフルネス瞑想を行うことでかなり心身がクリアになる
退屈を感じるタイミングや原因がわかっていれば、それを見越して対策を講じることも可能です。
例えば、僕の場合、午後3時あたりに退屈を感じる原因として、以下のようなことが思いつきます。
- 1日のタスクが完了し、手持ち無沙汰になっている
- 昼食後の血糖値スパイクによる眠気がピークに達し、疲労と相まって退屈を感じている
上記のような「原因らしきもの」が発見できれば、以下のような対策を用意することもできます。
- 昼食後、1杯のコーヒーを飲む。その後、20分程度の短い昼寝をするか、瞑想を行う
- 手持ち無沙汰になったときにできる「簡単かつ脳が喜びそうなタスク」を用意しておく
- すべてを諦めて、頭が最高にハイになるゲームを遊ぶ。あるいは、映画やアニメを観て脳を覚醒させる
- そもそも疲労が溜まらないように、ポモドーロ・テクニックなどの作業効率化メソッドを取り入れる。
- 昼食の内容を見直し、血糖値スパイクが起こらないよう工夫する。
まとめ
退屈日記は、現代社会の喧騒から一歩離れ、自分自身と向き合うための素晴らしいツールと言えます。退屈を避けるのではなく、それを観察し、受け入れることで、より深い自己理解と内面的な成長を得ることができる──という寸法。
僕自身、退屈日記を始めてから、自分の内面により敏感になり、日々の小さな喜びにも気づけるようになった気がします。「退屈で仕方ねーぜ!」という方は、ぜひ退屈日記を試してみてください。きっと、新しい自分との出会いがあるはず。