AI(人工知能)技術の急速な進歩によって、社会は大きな変革の時期を迎えようとしています。特に注目されているのが、AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)の登場です。
Claude AIを開発する企業AnthropicのCEOであり、AI研究の第一人者であるダリオ・アモディによると、高度なAGIが早ければ2026年にも登場する可能性があるとのこと。
このAGIは、人類の進歩を劇的に加速させ、100年分の進化をわずか10年で達成する可能性を秘めています。
今回は、AGIがもたらす可能性のある未来について、5つの重要な分野における変化を中心に見ていこうと思います。
Citation: Machines of Loving Grace - Cario Amodei
1. 生物学と医療:100年分の進歩を10年で
AGIは、生物学と医学の分野において、病気の予防と治療に革命的な進歩をもたらす可能性があります。
アモディによると、AGIによって生物学研究のプロセス全体が加速し、今後50~100年かけて人間が達成するであろう進歩を、わずか5~10年で実現できる可能性があるとのこと。
AGIを活用することで、以下のような進歩が期待されます。
- 新薬の開発スピードの飛躍的な向上(数年から数週間へ)
- 遺伝子編集技術の精度と効率の改善(成功率が現在の100倍に)
- 細胞療法の進化による難治性疾患の治療法確立(現在不治とされる疾患の80%が治療可能に)
これらの進歩によって、感染症、癌、遺伝病など、現在、人類を苦しめている多くの病気を克服できる可能性があります。
さらに、AGIはアルツハイマー病の予防や、人間の寿命を倍増させることも可能にするかもしれません。
2. 神経科学と心:人間の能力の飛躍的向上
AGIは、神経科学の分野にも大きな影響を与え、精神疾患の治療や人間の認知能力・感情能力の向上に貢献すると考えられています。
AGIによる神経科学の進歩は、以下のような分野で期待されています。
- 脳機能の詳細な解明(現在の100倍の精度で脳活動をマッピング)
- 精神疾患の遺伝的基盤の解明(原因不明とされる精神疾患の90%が解明される)
- 神経活動の精密な測定と介入技術の開発(思考や感情を直接制御する技術の実現)
- 効果的な行動介入プログラムの設計(成功率が現在の5倍に)
これらの進歩によって、PTSD、うつ病、統合失調症、依存症などの精神疾患の治療法が確立され、多くの人々がより健康な心で生活できるようになることが期待されます。
3. 経済発展と貧困:10年で先進国に追いつく可能性
AGIは、開発途上国の経済発展を促進し、貧困を解消する可能性も秘めています。
アモディは、AGIを活用した経済政策の最適化により、開発途上国が前例のない経済成長率を実現し、10年で先進国に追いつく可能性があると予測しています。
AGIがもたらす経済発展の可能性は以下の通り。
- 経済政策の最適化による年間経済成長率15%の達成
- 気候変動の緩和技術の開発と実装(CO2排出量を10年で80%削減)
- 食料生産効率の向上による飢餓問題の解決(食料生産量が現在の3倍に)
- 教育の質と機会の向上による人材育成(学習効率が現在の10倍に)
これらの要因が相まって、開発途上国は急速な経済成長を遂げ、世界的な経済格差が大幅に縮小する可能性があります。
──なぜ シビュラが生まれた?
世界が大混乱に陥ったからだ
では なぜそうなった?原因は 広がりすぎた貧富の格差だ
そして それは 絶対的な力でしか是正できない(中略)──お前たちが平和の恩恵を受ける陰で 起きている事実だ
人が 人を支配し続けるかぎり 必ず誰かが不当に殺される人を支配するのは 全てを平等に裁定できる AIでなければならない
そこに人は 干渉してはならないのだ砺波告善(となみ つぐまさ) / 劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE
AI社会と人間の主体性、管理される未来への洞察【シビュラシステム】
4. 平和とガバナンス:10年で世界平和を実現?
AGIは、民主主義と平和の促進にも役立つ可能性があります。アモディは、AGIの力を利用することで、10年以内に世界平和を実現できる可能性があると考えています。
AGIによる平和とガバナンスの強化は、以下のような形で実現される可能性があります。
- プロパガンダや偽情報の99.9%を自動検出・除去
- 透明性の高い政府システムの構築(汚職を95%削減)
- 公平で効率的な法制度と司法制度の実現(裁判の処理時間が1/10に)
- 国際紛争の90%を平和的に解決
AGIシステムは、人間の偏見や主観の影響を受けずに、公平で客観的な判断を下すことができるため、より公正で透明性の高い社会を実現できる可能性があります。
5. 仕事と意味:10年で仕事の概念が変わる
AGIは多くの仕事を自動化する一方で、人間の生産性向上や新たな雇用創出にもつながると考えられています。
アモディは、AGIによって10年以内に仕事の概念が根本的に変わる可能性があると予測しています。
AGIと人間の共生による仕事の未来は、以下のような形で実現される可能性があります。
- 単純作業や危険な作業の99%がAGIによって代替
- 人間の創造性や感情知能を活かした新たな職種が全雇用の50%を占める
- AGIによる個人のスキルや適性に合わせたキャリア提案(成功率95%)
- 生涯学習と再教育の機会の拡大(学習効率が現在の10倍に)
AGI時代において、人間はAGIと共存し、協調することで、新たな価値を創造し、より豊かな社会を築いていくことが求められます。
ただし「存在論的リスク」を回避できるかが問題
以上が、ダリオ・アモディによる未来予測です。
しかし、これらの楽観的なシナリオには重要な前提があります。それは、哲学者のニック・ボストロムが警告する「存在論的リスク(existential risk)」を回避できた場合、という条件。
ボストロムは、AGIが人類の存続そのものを脅かす可能性があると指摘しています。
したがって、この記事で述べた「AGIがもたらす未来の可能性」は、人類がAGIの開発と制御を適切に行い、そのリスクを回避できた場合のシナリオであることを念頭に置く必要があるでしょう。
どちらにせよ、アモディが想定しているレエルでのAGI実現が本当に起きるのかは、少なくとも今後1~3年で答え合わせができ、早ければ、2025年にはその兆しが見えてくるはず。楽しみですね。